中国の上海交通大学と紹興文理学院の研究チームが、チップ上に組み込める微小な「真空管」を開発し、増幅回路や論理ゲートの構成にも成功した。長年、集積回路に取り込めなかった真空管の弱点を解いたもので、成果は2026年4月20日、学術誌Microsystems & Nanoengineeringに掲載された。
真空管は、半導体のトランジスタが広まる前のエレクトロニクスを支えた素子だ。動作が速く、ノイズや放射線にも強い一方、消費電力が大きく、集積化が難しく、寿命も短いため姿を消した。近年、これを微細加工でチップ上に作り直す「真空・空気チャネル電子管(VET)」の研究が進むものの、ゲートから電流が漏れる問題が壁になり、回路に組み込めずにいた。
今回の素子は「カソード変調型」と呼ぶ仕組みでこの壁を越えた。従来は、電子の通り道をゲートでせき止めようとして漏れが生じていた。新しい素子は、制御用の電極(ゲート)で、電子を出す電極(カソード)の中の電子の量を調整する。厚さ45nmの薄いシリコンのカソードに、酸化膜を挟んだ裏側のゲートで電圧をかけ、表面に集まる電子を増減させて放出量を変える。カソードを出た電子はすべて反対側の電極(アノード)に届くため、ゲートに漏れる電流を桁違いに小さく抑えられる。
素子は、一般的な集積回路と同じ製造工程を使い、SOI(絶縁体上シリコン)ウエハーの上に作った。常温・大気圧で動く。これを使って、信号を増幅する複数の回路と、NORやNANDといった論理ゲートを構成した。真空・空気チャネル電子管が回路の部品として機能したのは初めてだとしている。
トランジスタの動作速度は物理的な限界に近づいている。研究チームは、今回の成果が、真空管をチップ上にまとめて集積する回路の土台になるとみている。一方で、出力が一定の値で頭打ちにならない性質があり、回路で使ううえでの課題として残る。