中国科学院大連化学物理研究所のDehui Deng教授とYanting Liu准教授らの研究チームは、海水から水素と淡水を同時につくる装置を開発し、出力250kWの規模で動かした。水を電気分解するときに出る熱で海水を蒸留する仕組みだ。論文は学術誌「Nature Energy」に2026年9月15日付で掲載され、中国科学院が翌16日に発表した。
研究チームによると、海水は水素の原料として豊富にあるが、海水をそのまま電気分解すると電極が傷み、効率も上がらない。一方、淡水を使う一般的なアルカリ水電解(アルカリ性の水溶液を電気分解する方式)では、投入したエネルギーの多くが温度の低い排熱として失われていた。
チームはこの排熱に目を付けた。圧力を下げると水は低い温度で沸くため、水を電気分解する電解槽から出る熱でも海水を蒸留できる。こうしてつくった淡水を電気分解の原料に回し、余った分は外部に供給する。海水を直接電気分解しないので、電極が傷む問題を避けられるという。蒸留で残った濃い塩水からは、塩やウラン、臭素を回収できるとしている。
チームはまず出力20kWの試験装置をつくり、水素を毎時3.8Nm³(標準状態に換算した体積)、淡水を毎時1.2kg生産しながら、100日間安定して動かした。続いて250kWに規模を広げ、純度の高い水素を毎時48Nm³、淡水を毎時31.6kg生産した。淡水だけで動かすアルカリ水電解と比べて、装置全体の電気の効率は14.4%高かった。論文は採算の試算も示しており、先に海水を淡水化してから電気分解する従来の手順より利益が大きくなるとしている。