凍った湖の氷が人や車を支えられるかを確かめるには、穴を開けて厚さを測るしかなかった。時間がかかるうえ、測る本人が薄い氷の上に立つことになる。広い範囲を調べようとすれば、その作業を何百回と繰り返す。
スイス連邦工科大学チューリッヒ校の学生10人が作った「POLARIS」は、氷の下から厚さを測る。重さ30kgの自律型の潜水機で、氷に開けた既存の穴から投入し、氷の裏側を進みながら測っていく。機械工学の8人と電気工学の2人による、5カ月の学生プロジェクトだ。
中身にはNVIDIAのJetson AGXを積み、航法とセンサーの処理、画像認識を受け持つ。6基のスラスターで前後左右と回転の6方向に動き、氷の下で位置を保つ。電子部品は引き出し式のトレイに収め、重りにはコンクリートの板を使った。
厄介なのは、水中では電波が届かないことだ。GPSの信号は水に遮られ、自分がどこにいるか分からなくなる。そこでチームはまず、音を使う測位を組み込んだ。機体側に発信器を、氷の上に3つの受信器を置き、音が届く時間の差から位置を割り出す。精度は1〜2mになる。
これでは足りないと考えた学生たちは、GPSを使う手を編み出した。機体の上部に空気を詰めたドームを載せ、その中にGPSのアンテナを入れる。水は衛星の電波を遮るが、氷はそれほど邪魔をしない。ドームを氷の裏側に押し当てれば、アンテナと水のあいだに空気の層ができ、電波を受け取れる。水平方向の精度は、これで約1.4cmに上がった。
厚さの測定にも2通りを用意した。1つは上向きの超音波で、氷に向けて音を出し、跳ね返りから厚さを計算する。ただしアルプスの氷は一枚板とは限らない。雪がシャーベット状になったり、氷の層が何枚も重なったりして、返ってくる音が読みにくくなる。
そこでもう1つ、機体を浮上させてドームを氷に直接触れさせ、水圧センサーで自分の深さを測る方法を組み込んだ。機体の寸法と氷の表面の高さが分かっていれば、そこから厚さを引き算できる。
マッターホルンに近いTheodul湖での試験では、10m離れた2つの穴のあいだを自力で航行した。その後は30×30mの範囲を16の地点をたどりながら測量し、厚さの違いを色分けした地図に仕上げている。帰り道も自動で、投入した穴に置いた音響モジュールを目印にして戻ってくる。
チームは今後、南極のような遠い場所への展開も見据える。設計データの公開予定は示されていない。