英グラスゴー大学と豪シドニー大学の研究チームは、3Dプリントした格子構造の部材が引っ張られている最中に、どこで損傷が進んでいるかを画像で示す手法を開発した。病院で肺の働きを調べるのに使われる電気インピーダンストモグラフィー(EIT)を応用し、部材の外側に付けた電極の測定だけで内部の状態を描き出す。チームによると、荷重がかかった状態の3Dプリント格子材料の損傷をこの方法で観察したのは、報告されている限り初めてだという。
格子構造は、細い柱とすき間を規則的に組み合わせた構造で、形の設計次第で軽さや強さ、衝撃の吸収しやすさ、しなやかさを調整できる。医療用のインプラントや航空機の部品、自動車の車体などでの利用が見込まれる。ただ、部材の状態を電気で測るこれまでの方法では、特定の1点の値か、部材全体の平均値しか分からない。複雑な格子のどこで損傷が始まり、どう広がっていくかまでは見えなかった。同大学の研究室は2024年に、格子が伸び縮みしたときの電気の通りやすさの変化を予測する計算の枠組みを作ったが、手法が複雑だった。
そこでチームは、部材全体の電気の流れを一度に測る方法を選んだ。光で固める樹脂にカーボンナノチューブを混ぜて電気を通すようにし、光造形の3Dプリンターで幅48mmの長方形の格子を造形した。周囲に16個の電極を付け、電流を流しながら表面の電圧を測る。部材が伸びると、格子の中で電気が通る道が変わり、表面の電圧の分布も変わる。電圧の変化をアルゴリズムで画像に戻せば、内部のどこで電気が通りにくくなったか、つまりどこが傷んでいるかが分かる。
試験片を破断するまで引っ張りながら測定し、得られた画像を実際の壊れ方と照合した。損傷の位置は柱1本分ほどの誤差で特定でき、電極から離れた場所の損傷もとらえた。破断する前に損傷がたまっていく場所も画像に現れた。あらかじめ一部の柱に小さな亀裂を入れた実験では、ひずみが増えるにつれて亀裂が広がっていく様子を追うことができた。
研究を率いたShanmugam Kumar教授は「MRIが体全体で何が起きているかを示すように、この方法では格子の各部分が力にどう反応しているかが見える」と説明する。構造物の健全性の監視などへの応用が考えられる一方、実用に向けて技術を発展させ、規模を広げるにはさらに研究が必要だとしている。成果は2026年9月28日、学術誌Advanced Functional Materialsに掲載された。