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2K〜500°Cで動く酸化ガリウムFinFET、KAUSTが実証

シリコン製のトランジスタは、200°Cを超えると動作が不安定になり、極低温でも電子が「凍りついて」電流を運べなくなる。サウジアラビアのKing Abdullah University of Science and Technology(KAUST)の研究チームは、ベータ酸化ガリウム(β-Ga2O3)でほぼ絶対零度の2K(−271.1°C)から500°C(932°F)まで安定動作する電子デバイスを試作したと、KAUST Discoveryで2026年4月27日に発表した。超ワイドバンドギャップ半導体で構成したトランジスタとロジックインバータが極低温で動作したのは、これが初の実証だとしている。研究を率いたのはAdvanced Semiconductor Laboratoryを主宰するXiaohang Li教授のグループだ。

両極端の温度を1つの材料で扱えた要点は、β-Ga2O3が持つ約4.8eVの超ワイドバンドギャップにある。バンドギャップが大きいほど電子を伝導帯まで励起しにくく、高温環境でもリーク電流が増えず、絶縁破壊にも強い。シリコン製品が一般に200°Cで限界を迎えるのに対し、500°Cまで動作する余地が生まれる。一方、低温側では別の課題がある。半導体には不純物原子をわざと混ぜて電気を通しやすくする「ドーピング」が必須だが、極低温では熱エネルギーが足りず、ドーパントから電子が伝導帯に飛び出せなくなる「キャリア凍結」が起きる。

KAUSTのチームは、β-Ga2O3にシリコン原子を高濃度でドーピングする手法でこの問題に対処した。シリコンを高密度で打ち込むと、不純物原子が作る局所的な電子状態が連なる「不純物バンド」が形成され、極低温でも電子はこのバンドの中をホッピングするように動いて電流を運ぶ。「2Kでは伝導帯まで電子が飛び上がる熱エネルギーがほとんどない。代わりに、シリコン原子が作る不純物バンドを電子がホッピングして動く」とLi教授はKAUSTの発表で説明する。

試作デバイスは2種類だ。1つは3次元のフィン形状チャネルを使ったFinFETで、現代のシリコン製品でも採用される構造のため、平面型FETに比べ短チャネル効果が抑えられON/OFF制御が安定する。もう1つはNOTゲートにあたるロジックインバータで、デジタル回路の最小構成要素だ。両方が2Kから500°Cの広い温度域で安定動作した。応用先として挙げられるのは、極端な温度変動にさらされる宇宙探査機や衛星と、量子ビット制御で2K以下を必要とする量子コンピュータの極低温制御エレクトロニクスだ。チームは今後、RFトランジスタ、フォトディテクタ、メモリセルなど温度耐性デバイスのポートフォリオを広げ、より複雑な極低温チップへスケールアップしたいとしている。

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FabScene編集部

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