50年ぶりの有人月面車両、NASAが月の水と鉱物を探す3つの科学機器を選定

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NASAがアルテミス計画で使用する月面探査車(LTV:Lunar Terrain Vehicle)に搭載する科学機器3つを選定した。このうち2つが月面探査車に搭載され、1つが将来の軌道上での観測に使用される。月面探査車は50年以上ぶりとなる宇宙飛行士が運転する月面車両で、最大2名の宇宙飛行士が搭乗できるほか、無人での遠隔操作も可能だ。

選定された機器のうち、月面探査車に搭載される2つは月の表面と地下の詳細な調査を担当する。「アルテミス赤外線反射・放射分光器(AIRES)」は月の鉱物と揮発性物質(水、アンモニア、二酸化炭素など蒸発しやすい物質)を特定・定量・マッピングする。可視光画像に重ねたスペクトルデータを取得し、月の南極地域での鉱物と揮発性物質の分布を調査する。

「月マイクロ波能動・受動分光器(L-MAPS)」は月の表面下の構造を調べ、氷が存在する可能性のある場所を探索する。分光器と地中探査レーダーを組み合わせた機器で、地表から40メートル以上の深さまでの温度、密度、地下構造を測定できる。

軌道からの観測で全体像を把握

3つ目の「月用超小型撮像分光器(UCIS-Moon)」は将来の軌道飛行で使用され、月面探査車の発見に地域的な背景を提供する。軌道上から月の地質と揮発性物質をマッピングし、人間の活動がそれらの物質にどのような影響を与えるかを測定する。また、宇宙飛行士が月の試料を採取する科学的に価値の高い地域を特定する役割も担う。

NASA科学ミッション本部のNicky Fox副長官は「アルテミス月面探査車は、科学探査と発見の壮大な旅路で、人類をこれまで以上に月の最前線へと運ぶ」と述べた。

2つの機器から得られるデータを組み合わせることで、月の表面と地下の構成要素の全体像が明らかになり、人間の探査を支援するとともに、太陽系内の岩石惑星の歴史に関する手がかりが得られる。これらの機器は月の資源特性の把握、月の構成成分、氷の可能性のある場所、月の時間的変化の観察にも役立つ。

NASAは現在、月面探査車の3つのベンダー企業(Intuitive Machines、Lunar Outpost、Venturi Astrolab)と協力して予備設計審査を完了している。各社の商用月面探査車の初期設計がNASAのシステム要件をすべて満たしていることが確認された。NASAは2025年末までに実証ミッションのベンダー選定を決定する予定だ。

アルテミス計画を通じて、NASAは月とその周辺で人間の探査者が最も効果的に取り組める優先度の高い科学的課題に対処し、火星への初の有人ミッションの基盤を構築する。

関連情報

NASA アルテミス月面探査車科学機器選定発表

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