NASAが公開する夜間光データ「Black Marble」を使った分析で、地球全体の人工照明が単純に増え続けているわけではなく、場所ごとに明暗が目まぐるしく入れ替わる「揺らぎ」の状態にあることが明らかになった。研究成果は2026年4月9日にNatureに掲載され、NASAは2026年5月15日にEarth Observatoryで可視化地図とともに公開した。
Black Marbleは衛星「Suomi NPP」と「NOAA-20」に搭載されたVIIRS(可視光・近赤外線イメージャー)の夜間観測データをもとに構築されたNASAの製品で、月明かりや雲の影響を除去した上で地表の人工照明の輝度を高精度で記録する。今回の分析は2014年から2022年までの約8年分の日次データを対象に、南緯60度から北緯70度の範囲(人が居住する大部分の地域)を網羅した。
従来は夜間光の総量が年々増加しているとみなされてきたが、今回の分析は「単調増加ではなく高い変動性が本質だ」という結論を示した。地域ごとにデータを見ると、工業地帯の増産・縮小、建設の進捗、停電(紛争や自然災害によるもの)、さらには省エネ政策によるLED照明への切り替えなどを反映して、明るさが頻繁に変化していた。可視化マップでは輝度が増加した地域を金色、減少した地域を紫で表現しており、工業化が進む地域の拡張と、停電や再開発による暗化の両方が一枚の地図上に示されている。
NASA Earth Observatoryは、地図を「物事がどこにあるかだけでなく、どう変化したかを示せる」メディアとして位置づけており、今回の夜間光マップはその典型例だとしている。夜間光の変動パターンを衛星データで広域・継続的に把握する手法は、経済活動・インフラ整備・紛争の影響などを地上調査なしに把握する手段として応用研究が進んでいる。