
パナソニック株式会社デザイン本部は2025年8月29日、家電製品のフラットなボタンの位置や種類を分かりやすくする「アタッチメントチップ」の3Dプリント用データを無償公開した。視覚に頼らずにボタンの位置や方向を認識できるよう設計されており、誰でも3Dプリンターで出力して家電に接着するだけで使用できる。
アタッチメントチップは、同社がさまざまな方と共に課題を見つけ、解決方法を考えるプロセス「インクルーシブデザイン」の取り組みから生まれた。開発にあたっては、視覚障害者、高齢者、子育て中の方、リウマチの方、認知症の方などと共に、デザイナー複数名が連携してワークショップを実施した。
近年の家電製品には、お手入れのしやすさや見た目の美しさを重視したフラットな操作ボタンが増えているが、パナソニックには「視覚でしかわからず操作しづらい」「どのボタンが何か分かりにくい」といった声が寄せられていた。同社の取り組みでは、赤ちゃんを抱っこしている際の視界制限や、たくさんのボタンの中から目的の機能を見つけるのが困難な場面での課題が明らかになった。
開発過程では、3Dプリンターで出力したプロトタイプを繰り返し試作し、シンプルな記号であれば判別可能なことや、ボタンの周りに枠があることで指で当たりを付けられることなど、さまざまな発見があったという。社会福祉法人日本ライトハウスの協力のもと、点字が読める指先の繊細な方だけでなく、指先の感覚が鈍い人も判別しやすい触覚の条件を検証し、実際に電子レンジやIHクッキングヒーターで操作性を確認した。
タッチメントチップは、タイルタイプとフレームタイプの2種類を用意。さまざまな家電のボタンに対応できるよう、4種類の形状と8種類の記号を用意している。記号にはトースト(食パン)、解凍(魚)、飲み物あたため(マグカップ)、ごはんあたため(茶碗)などの代表的な操作を表すピクトグラムが含まれる。

データの取得は、特定非営利活動法人ICTリハビリテーション研究会が運営する自助具共有プラットフォーム「COCRE HUB(コクリハブ)」を通じて提供される。ユーザー登録と利用規約への同意が必要だが、データ自体は無料で利用できる。パラメトリック機能を使用すれば、チップのサイズを調整したり、8種類の中から好みの記号を選択することも可能だ。
同プラットフォームには2025年7月現在、全国85のコラボレーターが登録されており、3Dプリンターを持たないユーザーでも作業療法士をはじめとする協力者に相談できる環境が整っている。
使用方法は簡単で、家電のボタンサイズを測定し、3Dプリント用データをダウンロードして出力した後、両面テープで貼り付けるだけ。フラットな操作部に後付けすることで、指先の触覚でボタンの位置や方向が分かりやすくなる。
パナソニックでは、このアタッチメントチップが視覚に制約のある方だけでなく、一時的に視野が限定される場面でも役立つツールとして、幅広いユーザーの生活を支援することを期待している。