ラズパイで昆虫の受粉活動を24時間監視、AI技術活用の庭園システム

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イギリスで開催された園芸展示会で、AI技術を活用した庭園の事例をRaspberry Pi財団が公開した。同庭園ではRaspberry Pi 5とHailo 8 AI Kitを組み合わせたシステムが昆虫の受粉活動を監視し、都市部の樹木保護に貢献している。庭園デザイナーのTom Massey氏とJe Ahn氏が設計し、AvanadeとMicrosoftが技術協力した。

同庭園は都市部の樹木が直面する深刻な問題解決を目指している。都市部に植えられた樹木の30%が1年以内に枯死し、50%が10年以内に失われているという現状を受け、AIとセンサー技術による新たなアプローチを提案した。樹木が二酸化炭素の吸収で中性になるまでに最大16年かかるため、適切な管理が重要となる。

ラズパイによる受粉昆虫の監視システム

Raspberry Pi 5とHailo 8 AI Kitで構成されたシステムは、庭園内の受粉昆虫の活動を24時間監視している。Pythonで開発された高性能物体検出プログラムが、昆虫の種類、活動時間、花への着地回数などを自動的に記録し、統計データを収集する。

検出された昆虫の情報は静止画や動画とともにRaspberry Pi上のWebフロントエンドに表示され、Azure IoTハブ経由でメインシステムにも送信される。これにより園芸管理者は受粉活動の状況をリアルタイムで把握できる。

庭園内には17本の樹木にセンサーが設置され、土壌水分、樹液流、気象データ、大気汚染などを監視している。ESP32マイクロコントローラーを使用したセンサーネットワークがデータを収集し、Azure IoTハブを通じてクラウドで分析される。

AI技術で樹木と対話

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パビリオンの屋根に設置されたカメラで昆虫の来訪を自動的に記録し外部のサーバにデータ蓄積する

庭園の特徴的な機能として、来園者がWebアプリを通じて樹木と「対話」できる「TreeTalk」システムがある。センサーデータをAIが自然言語に変換し、樹木の健康状態や必要な手入れについて回答する仕組みだ。

ガーデンデザイナーのTom Massey氏は「技術は隠れて目立たないようにしており、来園者は技術が組み込まれていることを知らずに庭園を楽しめる」と説明している。同庭園は気候変動や生物多様性の危機に直面する中で、AIが都市樹木の健康維持にどう貢献できるかを実証するパイロットプロジェクトとして位置付けられている。

チェルシーフラワーショー終了後、庭園はマンチェスターのMayfield Parkに移設され、都市樹木管理のモデルケースとして継続運用される予定だ。Avanade UK Innovation & Sustainability LeadのAnnette Giardina氏は「2024年が観測史上最も暑い年となる中、都市樹木が都市の冷却と大気質改善に果たす役割は重要性を増している」とコメントしている。

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FabScene編集部