
Raspberry Pi財団が2025年6月30日、4ドル(約560円)の独立型無線モジュール「Raspberry Pi Radio Module 2(RM2)」の一般販売開始を発表した。Wi-Fi 4(802.11n)とBluetooth 5.2に対応し、RP2040とRP2350ベースの製品向けにターンキー無線接続を提供する。16.5×14.5mmのコンパクトサイズで、Raspberry Pi Pico WとPico 2 W SDKとの完全互換性を実現している。
同モジュールは既に一部パートナーに提供されており、Pimoroni Pico Plus 2 WやSparkFun Thing Plus – RP2350で使用されていたが、今回の発表により一般向けに広く販売開始され、データシートなどの技術文書も公開された。
「Radio Module 2」はInfineon CYW43439コンボチップを搭載し、Raspberry Pi Pico WとPico 2 Wで使用されているのと同じ無線チップを採用している。2.4GHz帯での最大96Mbpsの通信速度(PHY rate)を実現し、20MHz幅のチャンネルに対応する。Bluetooth機能では従来のBluetooth ClassicとBluetooth Low Energy(LE)の両方をサポートしている。
アンテナ設計では、従来のAbracon社ライセンス設計から変更し、Raspberry Pi独自開発のInverted F型アンテナを新たに採用した。また、Bluetooth機能にはBlueKitchen BTstackを使用し、ファームウェアはコンパイル済みでカスタマイズはできない仕様となっている。
事前認証取得で開発コストを削減
モジュールは事前に無線認証を取得済みで、開発者が独自に高額な無線認証プロセスを通過する必要がない。Raspberry Piは2036年1月まで製品供給を保証しており、長期ライフサイクルのアプリケーションにも適している。
技術仕様では、カステレーテッドエッジパッドと3つのGPIOを搭載し、gSPI(汎用SPI)インターフェースを通じてホストマイコンと通信する。電源は3.0V~4.8V(デフォルト3.3V)で動作し、I/O電源は1.8Vまたは3.3V(デフォルト)に対応している。
3つのGPIOピンはSPI経由で制御され、Pico W/2Wでは固定機能(LED、電源管理、VBUS検出)に使用されているが、RM2では汎用利用が可能となっている。また、通信にはRaspberry Piマイコンに搭載されたPIO(Programmable I/O)コアが必須で、他のプラットフォームでは使用できない制約がある。
消費電力はIEEE Power Save PM1 DTIM1の平均で1.19mA、受信アクティブ時(MCS7、-50dBm)で43mA、送信アクティブ時(MCS7、16dBm)で271mAとなっている。動作温度範囲は-30℃~+70℃を保証する。
ESP32シリーズとの競合で差別化ポイント
同価格帯ではESP32シリーズのモジュールが競合となるが、Raspberry Pi Pico W/2 W SDKとの完全互換性が差別化ポイントとなる。Raspberry PiのMicroPythonやC/C++による豊富な開発リソースとコミュニティサポートを活用できる点が特徴だ。
モジュールはENIG(無電解ニッケル/金)仕上げのカステレーテッドエッジパッドを採用し、1リールあたり960個で供給される。パッケージにはFCC IDとIC IDが印字され、EU、英国、米国、カナダで事前認証を取得済みのため、これらの地域では追加の無線認証が不要となる。
現在のモデルは「RMC20452T」という型番で、カステレーテッドホール、2.4GHz Wi-Fi 4、Bluetooth 5.2、テープ&リール包装に対応している。将来的にはデュアルバンドWi-Fi 6とBluetooth 5.4に対応した「RMC256554T」モジュールの可能性も示唆されている。
同モジュールは現在、米国、英国、一部EU諸国などの特定の国と地域で販売されており、各国の認定リセラーから購入可能となっている。日本での発売日は記事初出時点では未定だ。