
中国・深センで、地下鉄を利用してコンビニエンスストアに商品を配達する自律型ロボットの試験運用が2025年7月14日に開始された。ロボット41台がオフピーク時間帯に地下鉄に乗車し、駅構内のコンビニエンスストアに商品を配達するシステムだ。開発したのは中国不動産大手Vanke Group傘下のVX Logisticsで、深圳地下鉄と共同運営している。
開発の背景には地下鉄駅構内の店舗が抱えていた地上からの配送問題がある。従来は人手によるトロリー配送に依存していたが、地上での駐車場探しや朝の通勤ラッシュ時間との重複により、配送コストと時間の両面で問題となっていた。
AI配送システムと高精度センサーで自律運行

高さ約1mの配達ロボットはアジサシをモチーフとしたデザインで、LEDディスプレイに表情を表示することで親しみやすさを演出している。技術的には、パノラマLiDAR、AI配送アルゴリズム、特殊設計のシャーシシステムを統合した高度な自律走行システムを搭載している。
VX Logisticsが独自開発したインテリジェント配送システムが「頭脳」として機能し、各店舗の日次注文状況、店舗位置、配送時間要求、地下鉄の運行状況などの複数情報を統合して最適な配送ルートを算出する。パノラマLiDARは「目」の役割を果たし、駅構内の詳細地図を構築してロボットが迷うことなく移動できるようにしている。
シャーシの機械構造と制御システムは「骨格と運動神経」として、エレベーターの自律利用、ホームへの出入り、電車の乗降、列車到着の認識などの複雑な動作を可能にしている。VX Logisticsの自動化責任者Hou Shangjie氏は「ギャップを越えてエレベーターや車両に入ることができる独特のシャーシシステムを持つよう特別に設計されている。実際の性能に基づいて継続的に改良していく」と説明している。
現在、深センの地下鉄網は1日の乗客数が1000万人を突破する日が年間24回を記録しており、約300の地下鉄駅に同様の店舗が展開されている。地下鉄による配達システムが成功すれば、荷物配送、清掃用品、医療用品など、より幅広い分野への展開が期待される。