オランダのデルフト工科大学の研究チームは、カメラ1台で高速に飛ぶ自律型のレース用ドローン「MonoRace」を開発し、論文を2026年10月14日に科学誌「Science Robotics」で発表した。MonoRaceは2025年4月にアブダビで開かれた自律型ドローンのレースで、元世界王者の人間の操縦者3人に勝った。
同大によると、これまでの上位の自律型レース用ドローンと違い、MonoRaceは前向きのカメラ1台と、加速度や回転を測る慣性センサーだけで周囲を把握し、機体を制御する。GPSや、外から機体の位置を測る装置は使わない。
高速で飛ぶと、カメラの画像はぶれてゆがむ。MonoRaceでは、ニューラルネットワークが画像からレースのゲートを見分け、慣性センサーの値と機体の動きのモデルを組み合わせて、自分の位置と動きを推定する。チームは、実際の飛行で起きる画像の乱れや、センサーが測れる上限を超える現象にも対応させた。
制御も作り直した。何段もの制御器を重ねる従来の作りの代わりに、64個のニューロンを3層に並べた小さなニューラルネットワークが、モーターへの指令を直接出す。ネットワークは機体の制御用のチップ(フライトコントローラー)で動き、毎秒500回指令を出す。チームは強化学習という手法で、機体の物理的な限界を踏まえて飛ぶよう学習させた。画像の処理には、機体に積んだNVIDIAのJetson Orin NXを使う。
レースでは、機体とコースを主催者が設計・運用した。チームは自分たちが手を加えられない機体とコースで飛ばす必要があった。MonoRaceの最高速度は時速100kmに達し、ほかの自律型のチームすべてと元世界王者3人を破った。2026年1月に公開されたプレプリント(査読前の論文)によると、MonoRaceは11個のゲートを2周するコースを16.56秒で回った。一方、ほかの機体を避ける機能はなく、複数の機体が同時に飛ぶレースでは3位にとどまった。
同大は、速さの代わりに効率や安全を優先させる使い方もできるとしている。例として、ロボット掃除機や、船から岸へ荷を移すクレーンを滑らかに少ないエネルギーで動かす制御を挙げた。限られた計算能力で素早く確実に判断する仕組みは、車両や移動ロボット、将来の飛行ロボットや人型ロボットにも役立つと研究チームは見込んでいる。