米タフツ大学(マサチューセッツ州)の研究チームが、繊維の糸1本の上にミリメートル大のトランジスタをつなげて、立体的に折り曲げられる3次元の集積回路(IC)を作る手法を発表した。従来のフレキシブルエレクトロニクスは基本的に平らで見た目にも目立つが、この方式なら衣服の繊維と一体化した、目立たないウェアラブル電子機器を作れる可能性がある。研究成果は学術誌『ACS Applied Materials & Interfaces』に掲載された。
研究チームが用いたのは、有機材料でできた電気化学トランジスタと呼ばれる素子だ。ゲート絶縁体には「深共晶溶媒ゲル(eutectogel)」という材料を採用し、糸の上にトランジスタをデイジーチェーン状に数珠つなぎで並べていく。深共晶溶媒ゲルは、複数の成分を混ぜて溶かした「深共晶溶媒」と呼ばれる液体をゲル化した材料で、揮発しにくく、繊維の上で長期間安定に動くトランジスタのゲート絶縁層に向くという。糸そのものが繊維として長軸方向に伸び縮みするうえ、この回路は面と垂直な方向にも曲げられる、真の意味での3次元的な柔らかさを持つ点が新しい。論文では、単段・多段のアナログアンプなど、比較的複雑なアナログICを糸1本の上に組み立てられることを示した。
論文の第一著者はSonkusale研究室のRachel E. Owyeung氏で、対応著者を務めるSameer Sonkusale氏(タフツ大学工学部電気・計算機工学科教授)は、これまでも糸型センサーの開発を続けており、汗の成分をリアルタイムで測る繊維型パッチや、傷口の治癒を監視する縫い糸型センサーを報告してきた。今回の3次元IC構成は、その延長線上で「平面の基板を前提としないエレクトロニクス」の設計に幅を持たせる試みだ。センサーやワイヤレス通信部と組み合わせれば、衣服に縫い込んでも違和感のないウェアラブル健康モニターへの応用が視野に入る。