エストニアのタルトゥ大学とイタリア工科大学の研究チームは、体内を流れる液体の成分から、必要になったセンサーをその場で作り出すロボットを開発した。紫外線(UV)が当たった部分にセンサーができ、そのセンサーの信号で蛾(が)型のロボットが羽ばたく。論文は2026年8月7日に学術誌「Advanced Science」にオンラインで掲載され、10月23日発行の号に収録された。
部品をあらかじめ組み込んだり後から付け足したりする従来のロボットと異なり、動いている最中に体の中でハードウェアを合成する仕組みを目指した。生物の循環系が体内で物質や機能を配り直す働きを参考にしている。研究チームは刺激に応じてセンサーを生み出すこの手法を「レセプトジェネシス」と名付けた。
機体はBambu Lab「A1」などのFFF方式の3Dプリンターを使い、透明なPETG樹脂で造形した。胴体と、それぞれ86平方cmの羽2枚からなる。内部には幅1mm、高さ1.4mmの流路が血管のように巡り、全体で約3mLの液体を蓄える。液を染み込ませる部分は充填率25%で造形し、充填の線と線のすき間を微細な流路として使う。ここにピロールという化合物を含む液を流すと、樹脂の表面から約10µmの深さまで染み込む。
液体にはピロールと、光を受けると反応を始める開始剤、セルロース系の樹脂を混ぜた。波長365nmのUV LEDを60秒当てると、光が届いた部分だけでピロールがつながり、電気を通す樹脂のポリピロールが機体の中にできる。できたポリピロールはUVを受けるとインピーダンス(交流に対する電気抵抗)が下がるため、そのままUVセンサーとして使える。黒く変色して生じたポリピロールは元に戻らない。マスクで光を遮れば、0.3mmの精度で狙った場所にだけセンサーを作れる。
蛾型の機体には直径30µmの金線の電極、マイコン「ATtiny43U」、容量10mAhのリチウムポリマー電池を載せた。マイコンがインピーダンスの低下を5回続けて検出すると、65秒間の「反応」モードに切り替わる。羽は電流を流して温めると記憶した形に戻る形状記憶合金の線で動かし、5秒間の通電で1回羽ばたく。UVを繰り返し当てるとセンサーの感度は上がり、4カ月以上保管した後も機能した。
研究チームは論文で、今回の成果を、周りの環境に合わせて自ら体を変えるロボットに向けた一歩と位置づけている。ポリピロールは合成の条件によって、生体と電子機器をつなぐ部品、イオンの検出、腐食の防止、電磁波の遮蔽にも使えると論文は述べている。