背中が道路に変身、車のおもちゃを自作してマッサージしてもらう

FabScene(ファブシーン)| テクノロジーの「現場」を記録するメディア

1歳の子どもを育てている。抱っこや遊びで、私の体は常にバキバキ。こんな時、かつては夫がマッサージをしてくれた。でも、今は夫も力尽きている。

こうなったら、バキバキの原因である子ども自身にマッサージをしてもらうしかない。子どもが親の背中で遊ぶことで、親の背中の凝りを叩き潰してくれるおもちゃを作ってやる!

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車のおもちゃとTシャツのセットTシャツの背中側に描かれた道路に車を走らせると光って音が鳴る
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子育ては、力が尽きがち

我が家の1歳(男児)は大変元気。親はついていけずに力尽きることもしばしば。その結果、私は夜は大体、うつぶせ姿勢で床に落ちている。おかげで体はバキバキ。マッサージに行きたいが、なかなか時間がない。

私が力尽きていても、子どもが勝手に遊んでくれ、身体をマッサージにしてくれる、そんな一石二鳥なおもちゃを作りたい。

実は過去に似た発想から、姪とその両親に肩たたきゲームを作ったことがある。が、難しくてほぼ遊んでもらえなかった。今回はより低年齢なこともあり、よりシンプルな仕組み心がけた。考えたのは2案。

  1. プリント部分をタッチセンサーにするピアノ案
  2. 光る車と道路案

1のピアノ案はできる道筋が見えているが、スピーカー部分が別ユニットになるのがいまいち(紐が好きなので引きちぎられそう)。

2の案は魅力的だがちゃんと動くものができるかちょっと不安。作りながら決めることにする。

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電気を通すインクを試し、プリントしてみる

この工作のおもしろポイントは、導電性インクでTシャツをプリントするところだ。

導電性インクとは、その名のとおり電気を通す性質を持つインク。今回はBare Conductiveの Electric Paintという商品を使う。布にも使えるらしく、使用事例ではシルクスクリーンで布に印刷していた。

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まずは小さなピースを作り、テストしてみる。1枚しか作らないので、シルクスクリーン印刷ではなく、スポンジにインクをつけて直接塗る方式にした。カッティングシート(ビニールのシール)で道路の形のステンシルを作り、そこにインクをポンポンと乗せていく。粘度は高めか。匂いはなく、粒子も感じない。言われなければ導電性とはわからないだろう。

ケチってインクを少なめに塗ったらムラになったが、アスファルトのようでかえっていい感じにできた、と思ったのだが、これは失敗だった。テスターで測ってみると導通していなかったのだ。慌てて追加で厚めに塗ると、導通を確認できた。テストでLEDを光らせてみると…いけそうだ。車の案を作ることに決めた。

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塗りなおした部分はテスターで導通を確認できた

テストはうまくいったので、市販のTシャツの背中に道路のイラストをプリントをする。プレイマットをイメージして、デザインを作る。

Tシャツは市販の無地の物を購入。夫も着られるよう男性用のXLサイズにした。大きさを採寸し、カッティングシートでステンシルを作る。

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いくつかパターンを考えたが結局シンプルな図案に落ち着いた右図は1歳には難しいかとボツにしたもの
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採寸していたら息子が手伝っ邪魔してくれた新品のTシャツに早速お菓子の食べこぼしをつける

スポンジでインクをつけていく。実はこれが今回一番苦労した。

導通する程度に厚くインクを塗りたいが粘性が高いため、多めにインクをつけると布にスポンジがくっついて離す時に布が伸びてぼこぼこしてしまう。均一に印刷するのが難しく、XLサイズなので印刷範囲も広い。

「多少のムラはアスファルトの質感ですから!」と自分に言い聞かせながらスポンジをポンポンする。

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Tシャツの表面までインクがしみこまないよう中に段ボールを入れている

軽く乾いたらカッティングシートをはがす。1枚ごとに道路が現れてくる、この瞬間が一番楽しい。ムラやヒビ、細かなはみ出しはあるが、全然OKでしょう!

テスターで測ると、ちゃんと電気も通っている。ちなみに抵抗値は1cmくらいの距離で40Ω、一番遠い、首元から裾までで400Ω程度でした。

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一日乾かした時点で子どもに遊ばせたらインクが乾いてない部分がありあわや大惨事になるところだった。公式には15分で乾くと書いてあったが、厚めに塗った場合は長めに乾かした方がいい。

3Dプリントでおもちゃのパトカーを作る

次はおもちゃの車のガワを作っていく。光らせたいのでパトカーにした。線画を描き、立体化。遊んでくれるかわからないのでとりあえずざっくり作る。こどものおもちゃは造形がシンプルなのでモデリングも楽だ。

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モデリングができたら3Dプリント。警告灯部分は光が透けるよう、別パーツにして透明な素材を使う。

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始めはもっと幅があるデザインだったが、子が持ちにくそうだったので、電子パーツが収まるギリギリの薄さまで修正した。

電子工作で光らせて音を出す

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車の後輪2つとTシャツの道路と接触すると、電気が流れてLEDが点滅し音が鳴る回路とプログラムを作る。

マイコンは家に転がっていたArduino UNOを使った。電池で動かせるのが便利。LEDと圧電スピーカー、アルミテープを貼った車の後輪をそれぞれArduino UNOにつなぐ。

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回路ができたらプログラムだ。単純にいえば、アナログ入力が閾値以上になったらLEDとスピーカーを動かし、閾値以下になったら止める、という仕組み。プログラムはAIに書いてもらった

道路に乗せると光って鳴るパトカーができた、が?

Tシャツの道路部分に後輪をあてると、ヨシッ!音がする!ピカピカ光る!できたぞ〜。

ところで、実は初めから気になっていることがあった。これ、電気が流れるところに身体が触れちゃうけど大丈夫なのか?買ったおもちゃでも似たものがあったので電圧電流が大きくなければ大丈夫なんだろうけど…。ネットで調べてみると大丈夫と書かれているが、使うのは我が子。ここは我が身を持って試しておこう。

まず手で両方の電極を触ってみる。何も感じない。しかし乾いた手は電気が流れにくいのでまぁそうだろう。より電気が流れやすく、感知しやすそうなやり方で試すなら…そう、舐める!舌ならちょっとピリッとするかもしれない。後輪2つに舌が同時に触れるように、恐る恐るペロっと舐めてみたが何も感じない。これなら大丈夫、ということにしよう。

一歳児は親の背中で遊んでくれるのか

作ったはよいが問題は遊んでもらえるかどうか。なにしろまだ1歳児。知能レベルとしては犬やタコより低いらしい。この高度な仕組みを理解して遊ぶことができるのか。いざ与えてみる。

まずは車を地面を走らせて遊び始めた。車であることはわかるらしい。でも道路はわからないようだ。しょうがない、私が背中にあてて見本を見せてやる。すると背中で遊び始めた。すごい、すごいぞ!光ったり音が鳴るのが気になるようで、どうやったら鳴るのか試しながら遊んでいるようだ。だんだん的確に道路を捉えるようになった。

普段うつ伏せでいると「寝てないで遊べ」とばかりに髪を引っ張られたりするのだが、そういうこともなかった。

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想定していなかったこの動きが一番マッサージになり気持ちいい走らせてはいないが

壊す→改良、子との戦いは続く

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子、光る部分が気になりすぎて押しまくり、1日目にして早速壊した。

自作おもちゃは、壊れたら改良のチャンスである。遊んでくれることがわかったので、車もTシャツも少しずつ改良しているところだ。

それにしても世の子供向けおもちゃを作る方々の苦労が偲ばれる。ありがとうございます、お世話になっております。

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Tシャツもかわいくしている

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ライター・デザイナー。 電子工作やデジタルファブリケーションを駆使して、生活をちょっとへんてこでちょっと便利にする(かもしれない)ものを作っては記事を書いている。

現在は、三浦半島の先っぽで自宅をメイカースペースとして時々開放しつつ、自分のものづくりをしたり、人のものづくりを応援したり。

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