
夏の海水浴やサーフィンで重要な潮の満ち引き情報を手軽に確認できる手作りデバイスが開発された。開発者のkronsby氏がGitHubで公開した「esp-tidechart」は、ESP32マイコンボードを使用して潮汐情報を表示する小型デバイスの設計データとソースコードだ。
[画像URL:GitHub内のプロジェクト画像 キャプション:ESP32を使った潮見表デバイスのプロジェクト概要(画像出典元:GitHub)]
制作者のkronsby氏は、家族との海水浴中にGoogleのAI「Gemini」を使いながら、このデバイスを開発したと説明している。実際に海辺で使用したところ便利だったため、毎年持参できる本格的なデバイスへの発展を検討中だという。
このプロジェクトでは、中国Lilygo社製の「T-Display S3」開発ボードを使用している。同ボードはESP32-S3チップを搭載し、1.9インチのカラーLCD画面(320×170ピクセル)と2つのプログラマブルボタンを内蔵している。Wi-Fi 802.11およびBluetooth 5.0に対応しており、潮汐データの取得に必要な通信機能を備えている。
T-Display S3は縦約8cm、幅約3cmのコンパクトサイズで、海辺での携帯に適している。USB-C端子での充電・プログラミングが可能で、外部バッテリーでの長時間動作にも対応する。
kronsby氏の実例では、容量45000mAhの大型バッテリーパックに接続してキッチンの棚に設置し、5日間連続で動作させた。ただし、10秒間隔での更新設定のため消費電力が大きく、15分間隔への変更でより長時間の動作が可能になると述べている。
海水浴やサーフィンでの実用性
潮汐情報は海水浴やサーフィンにおいて重要な要素だ。満潮時は水深が深くなり遊泳に適するが、干潮時は岩場や浅瀬が露出して危険な場合がある。サーフィンでは潮の状況によって波の質が大きく変わるため、事前の潮汐確認は欠かせない。
従来はスマートフォンアプリや潮汐表で確認するのが一般的だったが、海辺では砂や水による故障リスクがある。また、スマートフォンのバッテリー消費を避けたい場面も多い。専用の潮見表デバイスがあれば、これらの問題を解決できる。
ハードウェア設計のポイント
ESP32-S3は240MHzのデュアルコアプロセッサを搭載し、Wi-Fi通信と画面描画を並行処理できる性能を持つ。512KBのSRAMと4-16MBのフラッシュメモリにより、潮汐データの一時保存と計算処理が可能だ。
T-Display S3の1.9インチ画面は、ST7789ドライバを使用したIPS液晶で、屋外での視認性も良好だ。SPI通信により高速な画面更新が可能で、グラフィカルな潮汐表示に対応できる。
消費電力の最適化では、ESP32-S3のディープスリープ機能を活用することで、画面表示時以外の消費電力を大幅に削減できる。Wi-Fi通信も必要時のみ有効化することで、バッテリー駆動時間を延長できる。
kronsby氏は将来的に、より省電力な設計への改良を検討しており、「少し手を加えれば、本当にクールな単体デバイスになる可能性がある」とコメントしている。
ソースコードはGitHubで公開されており、同様のデバイスを制作したい開発者が参考にできる。