
電気自動車の普及に伴い、より長い航続距離と電動航空機の実現が求められる中、中国の電池大手CATLが画期的な次世代電池技術を発表した。同社が開発したリチウム金属電池は、従来電池と比べて2倍の寿命を実現し、電気自動車なら現在の2倍近い距離を走行できる性能を持つ。この研究成果は権威ある科学誌Nature Nanotechnology誌に掲載され、電動航空機の商業化に大きく前進すると期待されている。
現在の電気自動車用リチウムイオン電池は、航続距離を伸ばそうとすると電池の劣化が早くなるという課題を抱えていた。これは重い荷物をたくさん積んだ車が燃費が悪くなるのと似ており、高性能と長寿命を両立することが困難だった。特に電動航空機では、軽量で高出力、かつ長寿命の電池が不可欠だが、これまでの技術では実用化のハードルが高かった。
従来電池の課題を根本から解決
CATLの研究チームは、電池が劣化する仕組みを詳細に調べる新しい分析技術を開発した。これまで電池の内部で何が起きているかは「ブラックボックス」状態だったが、今回の技術により電池の劣化過程を完全に可視化することに成功した。
その結果、従来考えられていた劣化原因とは異なり、電池内の特定の化学物質(電解質塩LiFSI)が徐々に消費されることが主な原因と判明した。電池の寿命が尽きる頃には、この物質の71%が失われていることが分かった。これは携帯電話のバッテリーが次第に持ちが悪くなるのと同じ現象だが、その根本原因が初めて科学的に解明されたことになる。
実用化への道筋が明確に
この発見に基づき、CATLは電池内の化学成分の配合を最適化した。具体的には、重要な化学物質の濃度を高めながら、電池の性能を向上させる新しい材料を追加した。この改良により、電池の容量を増やすことなく、性能と寿命の両方を大幅に向上させることに成功した。
新開発された電池は、従来品と同等の充電効率を保ちながら、寿命を2倍の483回の充放電サイクルまで延長した。この性能なら、電気自動車では現在の倍近い航続距離を実現でき、電動航空機の商業運航も現実的になる。1回の充電で東京から札幌まで飛行できる電動旅客機や、現在のガソリン車並みの航続距離を持つ電気自動車の実現が見えてきた。
CATLの研究開発担当共同社長のOuyang Chuying氏は「学術研究と実用的な商業製品との間のギャップを埋めることができた。電池の寿命を決定する根本的な要因を理解できたことで、より良い電池開発への道筋が明確になった」と述べている。
この研究は次世代電池技術の開発に特化したCATLの研究施設「21C Lab」で実施された。同社は2024年だけで約186億元(約2590億円)を研究開発に投資し、世界で4万3000件以上の電池関連特許を保有している。今回の成果により、電気自動車の普及加速と電動航空機時代の到来が現実味を帯びてきた。