スコットランド伝統織物Harris Tweedが3Dプリンター導入、部品調達期間を6カ月から2時間に短縮

ハリス・ツイード公式サイトのキャプチャ

スコットランドの世界的な織物ブランド「Harris Tweed(ハリス・ツイード)」が、伝統的な織機の部品製造に3Dプリンティング技術を導入した。これまで最大6カ月を要していた交換部品の調達期間を2時間まで短縮し、織機の稼働率向上を実現している。

Harris Tweedは、法律によりスコットランドのアウター・ヘブリディーズ諸島の織り手の自宅でのみ手織りできると定められた希少な織物だ。しかし、織機の複雑な設計により交換部品の調達に最大6カ月を要し、織り手は他の職人から部品を借りたり、自ら織機を改造したりして稼働を維持してきたという課題を抱えていた。

この問題を解決するため、ハリス・ツイード織機部品会社(The Harris Tweed Loom Spares Co.)は、ストラスクライド大学が運営する国立製造業研究所スコットランド(NMIS)と提携し、3Dプリンター部品を組み込んだ新しい織機アセンブリー設計を開発した。

99%のコスト削減を実現

NMIS Digital Factoryの技術者らは、耐久性と高品質を兼ね備えた織機部品を製造するため、さまざまな材料をテストした。その結果、従来7点の部品で構成されていた重要な部品を、強固な複合材料を使用した3つの積層造形部品に再設計することに成功した。

新しい3Dプリンター製部品は従来品より99%安価で、デスクトップ3Dプリンターを使用して現地で2時間以内に製造可能だという。これにより、織り手は部品故障による長期間の生産停止を避けられるようになった。

実際に新部品をテストした織り手のJohn Bennie氏は、「織機の重要な部品が故障すると、数週間生産が止まってしまい、非常にもどかしい思いをしていた。必要な時に必要な部品を入手できることで、ダウンタイムを最小限に抑え、不要な中断なく作業に集中できるようになり、大きな違いを生む」と効果を実感している。

Harris Tweedは60カ国以上に輸出され、Dior、Ralph Lauren、Vivienne Westwoodなど世界的なファッションブランドでも使用されている。ハリス・ツイード協会のKelly McDonald運営責任者は、「職人技と伝統に誇りを持っているが、業界を次世代につなげるためには革新も不可欠だ。NMISとの協力により、製造に不可欠な織機の将来性を確保できる」と語る。

現在も織り手らが新部品のテストと改良を続けており、長年にわたって個別に改造された各織機に対応する汎用部品の開発が課題となっている。最終的な目標は、伝統的な織り工程の完全性を保ちながら簡単に取り付け可能な適応性の高い部品を作ることだ。

NMIS Digital FactoryのAndrew Bjonnes研究開発技術者は、「このプロジェクトは、現代の製造技術が伝統産業を後押しし、貴重な伝統技能の保存に寄与できることを実証している。積層造形により、織り手に自給自足を促進し、織機の稼働維持のためのスマートで費用対効果が高く、使いやすい方法を提供している」と成果を評価している。

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FabScene編集部