
車の盗難やIoTデバイスへの攻撃に使われる電波妨害装置(ジャマー)を、Raspberry Pi 5と機械学習技術で検出するシステム「Signal Sentinel」を、英Solent University最終学年の学生Josh Perryman氏が開発した。同プロジェクトはRaspberry Pi Official Magazine 154号とRaspberry Pi財団公式サイトで紹介されている。
電波ジャマーは、IoTハードウェアや車など無線接続デバイスへの攻撃に使用される脅威が増加している。特に車の盗難では、リモートキーの信号を妨害して車両のロックを無効化する手口が問題となっている。
Signal Sentinelは、4GBのRaspberry Pi 5がRTL-SDRドングルから提供されるリアルタイムのRF(無線周波数)トラフィックを分析し、機械学習により正常な電波と妨害電波を判別する。システムはフライトケースに収納されたポータブル設計で、小型LCDに「safe」または「jamming」の判定結果を表示する。
システムの主要コンポーネントは、ECサイトで購入した部品を中心に構成され、カスタム部品はほとんど使用していない。
データ収集が最大の課題、4か月のプロジェクト
PythonとMQTTの経験を持つJosh氏にとって、最大の技術的課題はRFジャマー検出のための多様なデータベースの構築だった。「妨害信号の種類と、背景ノイズ、キーフォブ、RF機器、ラジオ局などの『安全』な信号の十分な種類を含める必要があった」と述べている。
十分なデータを収集するまでには数ヶ月を要したようだ。Josh氏はノートPC上のUbuntu VMを使用してデータ収集、プロトタイピング、テストを実行し、機械学習モデルの効果を確認した後、Raspberry Pi OS用のシンプルなターミナルインターフェースを作成した。
元シェフで10年間の調理経験を持つJoshは「基本的なArduinoロボティクスプロジェクトとコースの一環としてのラズパイ気象観測所の製作した以外、開発経験はあまりなかった」という。しかし組み込みシステムとIoTに興味があり、ラズパイを使ったプロジェクトを作りたいと常々考えていたため、最終学年プロジェクトが絶好の機会となった。
Josh氏はSignal Sentinelが攻撃を軽減または防止する他のシステムと統合されることを想定している。ただし、Signal Sentinelは妨害信号を封じ込めて偶発的な干渉を防ぐため、実験室環境での使用が最適とされている。
なお、日本国内においても電波法により電波妨害装置の使用は禁止されており、イギリスでも厳格に禁止されている。電波ジャマーの使用については、世界各国で法律や規制が適用される可能性があるため、関連法規の確認が必要だ。