1文字入力に8回の操作が必要、「逆進化」したキーボード

読者の皆さんから日々多くの投稿をいただくFabSceneの読者投稿フォームに、興味深い作品の情報が寄せられた。ひげだるま氏が制作した「THE 8BIT KEYBOARD」は、通常のキーボードとは正反対の思想で設計された、8個のトグルスイッチを使って文字を入力するキーボードだ。

通常のキーボードであれば「a」キーを1回押すだけで「a」が入力できるが、この8ビットキーボードでは「a」の文字(ASCIIコード0x61、2進数01100001)を入力するために、8個のトグルスイッチを使って01100001のパターンを設定し、その後「KEY」ボタンを押すという手順が必要になる。入力が有効な場合は、スイッチ上部のLEDが点灯して状況を確認できる。本体は有線接続ではなく、Bluetoothキーボードとして認識される。

複数文字の同時入力も可能

この8ビットキーボードは単純な8ビット入力だけでなく、実用的なキーボードに近い機能も備えている。「STOCK」ボタンを使うことで最大3つのキーを記憶でき、ストック分と入力分を合わせて同時押しは4キーまで可能だ。ストックボタン上部のLEDにより、現在のストック状況も確認できる。

例えば、大文字の「A」を入力したい場合は、まず「shift」キー(0x81)をトグルスイッチで設定してSTOCKボタンを押し、次に「a」キー(0x61)を設定してKEYボタンを押すことで大文字の「A」が出力される。ただし、直接大文字の「A」(0x41)を設定すれば、shiftキーを使わずに済むとも説明されている。この機能により、Ctrl+Alt+DeleteやCtrl+Vなどの複合コマンドの送信も可能になる。

さらに「KEY LOCK」機能により、STOCKしたキーを継続して有効にすることもできる。この機能を使えば、Ctrl+Cの後にCtrl+Vのような操作や、Shift+矢印キーによる範囲選択などが可能になる。なお、キーロック時はストック機能は使用できない。

レーザーカッターで制作したレトロデザイン

構造はトグルスイッチとLEDというシンプルな構成で、筐体はMDF(中密度繊維板)をレーザーカッターで加工し、天然木調のステッカーを貼って仕上げられている。レトロPCを思わせるデザインが特徴的だ。

この作品は2021年のヒーローズ・リーグで「品モノラジオ賞」と「オレトク賞」を受賞している。審査員からは「便利なものを便利じゃなくするという作家本人のこだわりが出ていて、『オレトク』をも超え、現代アートに近いメッセージ性を感じる」との評価を受けた。

制作者は「前に進むだけが進化じゃない」として、SF映画の戦艦で使われていそうな古めかしいスイッチにキーボードを「進化」させたと説明。カチカチした感触と音が操作感を倍増させるとしている。また「忙しないご時世、素早い入力ではなく、ゆっくり入力するからこそ、見えてくるものがあるかもしれません」とのメッセージも込められている。

なお、詳細な技術情報やデモ動画は、ProtoPediaおよびHackaday.ioで公開されている。

※この記事は読者投稿フォームからの応募に基づいて作成しました。
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関連情報

THE 8BIT KEYBOARD(ProtoPedia)
The 8bit keyboard(Hackaday.io)

FabScene編集部