錆を自動修復するコーティング技術、米大学が開発 鉄製品の寿命を大幅延長へ


右:コーティングされていない鉄。左:コーティングされた鉄。いずれも錆を促進する条件に曝した後のもの。画像出典元:phys.org

自転車のチェーンから高層ビルの鉄骨まで、私たちの身の回りにある鉄製品の宿敵である「錆」。この厄介な問題に対し、米イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校の研究チームが画期的な解決策を発表した。開発されたのは、傷ついても自動で修復する特殊なコーティング技術で、従来の防錆方法を大きく上回る保護性能を実現している。

研究チームによると、このコーティングには特殊な分子構造が組み込まれており、外部からの刺激によって傷ついた部分が自動的に結合し直す。実験では、人工的に作った傷が数時間以内に修復されることが確認された。コーティングの厚さは数マイクロメートルと非常に薄く、鉄製品の形状や機能に影響を与えることなく適用できる。また、従来の防錆剤に含まれることの多い有害な化学物質を使用せず、環境への負荷も軽減されている。

研究チームは複数の腐食試験を実施し、このコーティングが従来の亜鉛メッキと比較して長期間にわたって優れた保護性能を維持することを実証した。特に、海水などの厳しい腐食環境下での性能向上が顕著だった。この技術が実用化されれば、インフラの維持管理コストを大幅に削減できる可能性がある。世界的に鉄の腐食による経済損失は年間数兆円規模とされており、建設業界や自動車産業、造船業界などへの影響は計り知れない。

研究チームは現在、実際の産業環境での長期試験を進めており、コーティングプロセスの大規模化に向けた検討も行っている。商業化には数年程度の期間が必要と見込まれるが、まずは高付加価値製品や重要インフラへの適用から始まる予定だ。

また、この自己修復コーティング技術は鉄以外の金属にも応用可能とされており、今後の研究次第では金属腐食対策の標準技術になる可能性も秘めている。

関連情報

研究論文(phys.org)

FabScene編集部

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