
スイスのクリエイターデュオVEEBプロジェクトが、19世紀の演劇で使われた「ペッパーズ・ゴースト」という光学錯視効果とRaspberry Pi 5を組み合わせて、画面が宙に浮いているように見える透明コンピューター「Pepper Pi」を制作した。ガラスドームの中に映像が浮かび上がる、まるでSF映画のようなデスクトップコンピューターとして実際に使用可能だ。
1900年代の株価表示機からインスピレーション
VEEBプロジェクトは「余剰な技術と真新しいもの」を組み合わせることを得意としており、今回のプロジェクトも1900年代初期の株価表示機(ストックティッカー)からインスピレーションを得た。16GBのRAMを搭載したRaspberry Pi 5という新しい技術と、1800年代の古い錯視技術を組み合わせている。
Pepper Piの仕組みは比較的シンプルだ。ガラスドーム内に45度の角度で配置された透明な反射板が、隠された画像を反射させてドーム内に浮かんでいるように見せる。実際には、Raspberry Pi 5がドームの基部に設置された小さな円形LCDパネルに画像を出力し、それが反射板を通じて視聴者の目に届く仕組みだ。
興味深いことに、Pepper Piは単なる視覚的なデモンストレーションではなく、実際に透明PCとして完全に使用可能だ。データ分析ソフトを実行するために「数値計算に十分な性能」を持つRaspberry Pi 5を選択したと製作者は説明している。
ただし、錯視効果自体は「より控えめなハードウェア」でも実現可能で、実際にPicoを使ったバージョンも制作しているという。
制作過程では、反射板の角度調整が重要な課題となった。当初は45度の視野角で設定したが、デスクに置いてPCとして使用する際の視認性が良くないことが判明した。
この問題を解決するため、VEEBプロジェクトは誰でも適切な反射板の形状を計算できる反射板形状計算機をWebサイトで公開している。三角法の計算が不要で、印刷してテンプレートとして使用できる。
結果として「良いスチームパンクの雰囲気」を持つ機能的なコンピューターが完成した。製作者は、モニターやキーボードなしで動作させて装飾品として使用しながら、サーバーとして機能させることも可能だと説明している。「スター・ウォーズのR2-D2を通じてレイア姫が送ったホログラムメッセージを断続的に再生する」といった用途も提案されている。
プロジェクトの全ての3Dモデルとコードは、GitHubでオープンソースとして公開されており、誰でも自作することが可能だ。ガラスドームはオンラインで購入でき、土台部分は3Dプリンターで制作する。
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