
開発者のPinefeat氏が、一眼レフで使用されるCanon EFレンズやEF-Sレンズを超小型コンピューターRaspberry Piのカメラモジュールに装着できるアダプターを開発し、海外の技術系掲示板サイトRedditで発表した。フォーカスや絞りの電子制御にも対応し、プロ仕様のレンズがRaspberry Piで本格的に活用できるという。
Pinefeat氏が開発した「Canon EF/EF-S Lens Controller & Adapter for Raspberry Pi High Quality Camera」は、Canon製の交換レンズをRaspberry Pi用の小型カメラモジュールに物理的・電子的に接続するためのシステムだ。単なる物理的な接続にとどまらず、レンズの電子制御機能をRaspberry Piから操作できる点が特徴となっている。
本格的なレンズ機能をラズパイで実現
このアダプターシステムでは、Canon EFレンズおよびEF-Sレンズのオートフォーカス機能と絞り制御機能を、Raspberry Piの標準カメラソフトウェアから直接操作できる。具体的には、rpicam-appsやlibcamera、V4L2 APIといったRaspberry Piの一般的なカメラインターフェイスを通じて、レンズの焦点調整や絞り設定を行うことが可能だ。
アダプターはレンズ制御基板、フレックスカメラケーブル、8線レンズケーブル、2線電源ケーブル、取り付け用アクセサリキットで構成されている。Canon独自の通信プロトコルをリバースエンジニアリングすることで、レンズとの電子通信を実現したという。
セットアップには、専用のカーネルドライバーのインストールとレンズごとのキャリブレーション作業が必要となる。GitHubで公開されているオープンソースソフトウェアにより、Raspberry Pi OS Bookwormでの動作に対応している。
小型センサーでプロ仕様レンズの恩恵
Raspberry Pi High Quality Cameraのセンサーサイズは対角7.9mmと、Canon EFレンズが想定するフルサイズセンサー(対角43.3mm)やEF-Sレンズ対応のAPS-Cセンサー(対角26.8mm)と比べて大幅に小さい。この違いにより、装着したレンズは実質的に望遠効果を得ることになる。
例えば、10mmのEF-Sレンズを使用した場合、センサーサイズの違いから実効焦点距離は約34mmとなり、広角レンズが標準レンズのような画角で撮影できる。200mmのEFレンズでは約1100mm相当の超望遠効果が得られるため、航空撮影などの用途で威力を発揮する可能性がある。
オートフォーカスはコントラスト検出方式(CDAF)を採用し、適切な照明下でのピント合わせが可能だ。レンズの絞り制御はV4L2 APIを通じて行われ、F値を100倍した整数値で指定する仕組みとなっている。
開発者のPinefeat氏は、1987年以降に製造された多数のCanonレンズとの互換性を完全に保証できないとしているが、レンズの自己診断機能も搭載しており、AF/MFスイッチを15秒以内に3回切り替えることで、フォーカスと絞り制御の動作確認ができる。