レトロな時計・電卓制作プロジェクト、ラズパイマイコンRP2350でレトロデバイスを現代に復活

画像出典元:Raspberry Pi財団

Raspberry Pi財団が、最新のRP2350マイクロコントローラーとニキシー管、ヌミトロン管といったレトロディスプレイ技術を組み合わせた工作プロジェクトを公開した。1950年代から1970年代にかけて計算機や測定器で使われていたガラス管の表示技術と現代技術の融合により、時計や電卓などの実用的なデバイスを製作している。

ニキシー管は、レトロなデバイスの表示器として使用されていた冷陰極管で、真空管のような外見で約170Vの高電圧を必要とする。一方のヌミトロン管は、ニキシー管より後に開発された表示器で、放電ではなく白熱フィラメントを使用しているため高電圧を扱う必要がない。LEDなどの表示器に取って代わられたためそれほど普及はしなかったが、ヌミトロン管は約5Vで動作するため、現代のマイクロコントローラーとの接続は、ニキシー管よりも容易だ。

最初のプロジェクトでは、Raspberry Pi Zero/Zero 2 Wほどの小さなサイズの時計を製作し、当初は数か月前から引き出しに眠っていたRP2350のプリプロダクション版を使用した。BCDから7セグメントドライバー(CD4511BE)を組み合わせることで、必要なGPIO数を削減し、比較的高い出力電流を確保した。

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フィラメント技術の利点と課題を活用

画像出典元:Raspberry Pi財団

ヌミトロン管は約20mAを消費するため、合計すると多くのマイクロコントローラーが扱える範囲を超えるが、専用ドライバーには問題にならない。4世代にわたる改良を重ね、温度制御水晶発振器(TCXO)の追加により、年間の最大誤差時間を15分から2.5分に短縮した。

PWMによる輝度制御機能も追加し、フィラメントの最大温度を下げることで時計としての寿命を延ばし、昼夜を通じて快適に使用できるように改善している。この技術によりニキシー管に比べて安全性と実用性が向上した。

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電卓プロジェクトでは、時計での学習を活かして、マイクロコントローラーが二進数を出力し、レベルシフター、BCDから7セグメントドライバーを経てヌミトロン管に表示する基本プロセスは同様だが、より多くの管を使用している。電卓は小数点の処理は容易だが、設計上の小さな見落としにより負の数を表示する方法がないという制約もある。

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ニキシー管を使った時計プロジェクトでは、高電圧を扱う初めてのプロジェクトのため、USBの5Vから必要な170Vに変換する既製モジュールを使用した。初回の回路基板では動作に問題があり、K115ID1チップを購入していたが、正しくはK155ID1 ICが必要だったことが判明するなど、技術的な課題も経験している。

関連情報

Numitrons, Nixies, and numeric displays(Raspberry Pi財団のブログ)

FabScene編集部

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