
測量技術で約170年の歴史を持つスウェーデンのHexagonが2025年6月17日、産業用ヒューマノイドロボット「AEON」を発表した。人手不足に悩む製造業向けに開発され、同社が培ってきた高精度センサー技術とAIを組み合わせることで、工場内での複雑な作業を人間と同じような動きで実行できる。
AEONの特徴は、Hexagonが長年培ってきた測量・計測技術を活用した高精度な作業能力にある。同社の独自センサー技術により、移動しながらも高い精度が要求される作業を実行できるという。また、マルチモーダルセンサーからのデータを統合して環境を理解し、与えられたタスクに応じて最適な行動を選択する空間認識能力を備えている。
汎用性の高さも特徴の1つで、特定の物体を掴む作業から産業部品の検査、デジタルツインの作成まで幅広いタスクに対応する。バッテリー交換機能により、充電のための停止時間なしに連続稼働が可能だ。
パートナー企業での実証実験を開始
HexagonはAEONの実用化に向けて、ドイツの産業機器メーカーSchaefflerとスイスの航空機メーカーPilatusと提携した。両社の工場で部品の取り扱い、機械メンテナンス、部品検査、現実空間の3Dデータ化などの用途で実証実験を行う。
Pilatus製造担当副社長のRoman Emmenegger氏は「スイスの製造業が直面する課題に対し、AEONが競争力維持に貢献する解決策になると期待している」とコメントした。
Schaeffler先進生産技術担当上級副社長のSebastian Jonas氏は「ヒューマノイドロボットのような破壊的技術を活用することで、業界をリードするモーション技術企業への道筋を開く」と述べている。
技術パートナーと連携し商用化を推進
AEONの開発には、NVIDIA、Microsoft、maxonといった技術パートナーが参画している。NVIDIAの高速コンピューティング技術「NVIDIA Jetson」とデジタルツイン開発プラットフォーム「NVIDIA Omniverse」を採用し、Microsoft Azureでスケーラブルな開発環境と機能訓練を実現する。また、maxonの次世代アクチュエーターがAEONの多様な環境での移動を支えている。
Hexagon取締役会長のOla Rollén氏は「当社は過去10年間、各事業部門でロボティクス技術の革新に取り組んできた。人口動態の構造的変化に直面する顧客の持続可能な成長を支援するという目標において、AEONは大きな前進だ」と述べた。
同社のロボティクス事業部門は今後6カ月間で生産環境でのAEON導入を進め、その後商用展開を拡大する計画だ。