Boston Dynamics製ロボット犬「Spot」がスペインの原子力発電所解体作業に投入

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スペインの廃止された原子力発電所で、Boston Dynamics製の四足歩行ロボット「Spot」を活用した放射性物質の特性評価システムが導入される。サンタ・マリア・デ・ガローニャ原子力発電所の解体作業において、AlisysとGDESの共同企業体(UTE)がスペイン放射性廃棄物管理公社(Enresa)向けに自律型ロボットシステムを開発・提供する。この取り組みにより、作業員の放射線被ばくリスクを大幅に軽減しながら、効率的な解体作業が可能になる。

2012年に運転を停止したガローニャ原発は、現在10年間の解体プロセスが進められている。446MWeの出力を持つ沸騰水型原子炉で、2023年にEnresaが所有権を取得し、2段階の解体計画を実行している。今回導入されるSpotロボットは、高精度ロボットアームと交換可能な測定機器、高度な分光分析ソフトウェアを搭載し、リアルタイムでの放射性データ分析が可能だ。

自律運用とクラウド連携で遠隔操作を実現

このロボットシステムは、材料、壁、床の自律的な特性評価を行い、汚染エリアと非汚染エリアを正確に分類する。クラウドプラットフォームと連携することで、収集データの管理と遠隔操作が可能になり、技術者は安全な場所からロボットを制御できる。これにより、ALARA原則(As Low As Reasonably Achievable:合理的に達成可能な限り低く)に基づいた被ばく低減と、作業効率の向上を同時に実現する。

プロジェクトには、ソリューション開発、テスト、試運転に加えて、現場でロボットを運用するEnresa職員の訓練も含まれている。このシステムは、エル・カブリル処分場に送られる放射性廃棄物の測定・特性評価プロセスを最適化し、解体作業中の職業リスク予防を強化する役割も担う。

世界的に広がる原子力施設でのロボット犬活用

原子力施設でのロボット犬の活用は世界的な傾向となっている。2025年5月には、英国のドゥンレイ原子力サイトでSpotが休止状態のクレーンを再起動させ、放射性廃棄物の安全な取り扱いを支援した。英国原子力公社(UKAEA)、セラフィールド、マンチェスター大学が参加するRAICo(Robotics and Artificial Intelligence Collaboration)が主導するこのプロジェクトでは、Spotが1週間の訓練を受けてクレーンの電源ボタンを押すタスクを完了し、廃棄物除去作業の継続を可能にした。

ヨーロッパ諸国は2030年までに危険な原子力区域での人間の介入を半減させることを目標としており、ロボット犬は解体作業の未来にとって不可欠な存在となりつつある。これらの四足歩行機械は、機動性、自律性、カスタマイズされたツールの搭載能力により、人間の作業者には危険すぎる領域での重要な役割を果たしている。

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プレスリリース(GDES)

FabScene編集部