ラズパイクラスターをシリコンオイル浸漬冷却で26°C低減、ブラジルの開発者が実験成果を公開

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ブラジル在住の開発者「code-2244」氏が2025年8月13日頃、Raspberry Pi 5を3台使用した低消費電力ARMクラスターにシリコンオイル浸漬冷却システムを導入し、大幅な温度低下を実現したと、Reddit上で発表した。従来のデスク上でのエアクーリングと比較して、平均温度を70°Cから43.9°Cまで26.1°C低減させることに成功している。

同氏が構築したシステムは、Raspberry Pi 5(16GB)3台、HAT、256GB SSD、スイッチ1台で構成され、Cloudflare(Gateway、Tunnel/Proxy、Firewall)とK3s(軽量Kubernetesディストリビューション)を運用している。冷却システムには50cSt(センチストークス)のシリコンオイル1Lを使用し、ベタ用の水槽に浸漬している。

システムの温度測定結果によると、従来のデスク上での7日間連続運用時は平均70.0°Cだったが、シリコンオイル浸漬冷却導入後24時間で平均43.9°Cまで低下した。現在は3台の冷却ファンを平均465RPMで動作させ、平均温度47.0°Cを維持している。

コミュニティからは効果と課題の両面で議論

Reddit上での議論では、冷却効果に対する評価が分かれている。あるユーザーは「標準のエアクーリングと比べてそれほど大きな改善ではない」とコメントし、Raspberry Pi 5で負荷時50~60°C、アイドル時45°Cでの運用例を示している。一方で、26°Cの温度低下は大幅な改善として評価する声もある。

使用されているシリコンオイルは50cStのPDMS(ポリジメチルシロキサン)で、無毒・無臭・無色の特性を持つ。code-2244氏によると、この粘度はモーターオイル程度で、化学的に安定しており低揮発性のため長期使用が可能だという。同氏はブラジルの産業用化学製品会社から購入したが、Amazonでも入手可能としている。

一方で、メンテナンス面での課題も指摘されている。microSDカードの交換時には指がオイルまみれになり、全体的にべとべとした状態になるという実用面での問題がある。また、一部のユーザーからは「月1回の液体交換が必要で、曇りが発生して効果が低下する」という指摘もあったが、code-2244氏は50cStシリコンオイルの耐久性を強調し、長期間の使用が可能と反論している。

技術的な観点からは、Raspberry Pi間の絶縁に関する懸念や、PDMS(ポリジメチルシロキサン)の低い熱伝導性について議論が交わされている。また、対流によるオイルの循環についても疑問が提起されており、単に加熱しているだけではないかという指摘もある。

このプロジェクトの用途について、code-2244氏は学習ツールやホームラボ、概念実証として位置づけており、高可用性クラスタリングの経験を積むためのものと説明している。現在はCloudflare tunnelをK3S上で実行し、外部システムからローカルネットワークへのアクセスを可能にする構成で運用している。

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Low-power ARM cluster raspiberry pi with silicone-fluid immersion cooling : r/raspberry_pi

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