天地人、JAXAと次世代センサの共同研究開始 宇宙から地面の温度を測る技術を高度化

FabScene(ファブシーン)

天地人は2025年9月24日、JAXA(宇宙航空研究開発機構)と共同研究を開始した。宇宙から地面の温度を測る新しいセンサ技術を使って、水道管の老朽化診断などをより精密にできるようにする研究だ。

今回の共同研究で使うのは「Type-II超格子検出器(T2SL)」という次世代センサー。従来のセンサーと違い、水銀などの有害物質を使わずに製造でき、より高精度な観測が可能になるという。JAXAが開発中のこのセンサーの模擬データを天地人が受け取り、実際の事業でどれだけ役立つかを検証していく。

天地人の主力サービス「宇宙水道局」は、衛星データを使って地下の水道管の漏水リスクを診断するシステムだ。地面の温度変化から水道管の異常を見つけ出すという、独自の技術を使っている。

2023年4月のサービス開始から2年半で、契約自治体は50を突破。分析した水道管の総延長は約11万kmと、地球を2.7周する長さに達した。これまでに約14万6000件の漏水リスクを発見している。

日本では年間2万件以上の漏水事故が起きており、その多くは老朽化が原因だ。高度経済成長期に設置された水道管は40年以上経過し、更新が必要な管は地球4周分(約17万6000km)もある。しかし更新費用は1kmあたり約2億円と高額で、すべてを交換するのは現実的ではない。そこで衛星データを使って優先順位をつけることが重要になっている。

2027年には自社衛星も打ち上げへ

天地人は2025年1月、独自の地表面温度観測衛星を2027年に打ち上げるプロジェクトを発表した。自社衛星により、より頻繁に、より詳細な地面の温度データを取得できるようになる。

地面の温度データは、水道管の診断だけでなく、農作物の生育状況把握、都市のヒートアイランド対策、災害時の被害状況確認など、幅広い分野で活用できる。天地人は創業以来このデータの価値に着目し、技術開発を進めてきた。

今回のJAXAとの共同研究により、次世代センサー技術の実用化に向けた検証が進む。将来的には、より精密な観測データを使って、インフラの維持管理や農業、防災など、さまざまな社会課題の解決につながることが期待される。

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