Prophesee、Raspberry Pi 5対応のイベントベースビジョンセンサキット「GenX320 Starter Kit」を発表

FabScene(ファブシーン)

仏Propheseeは、Raspberry Pi 5に対応したイベントベースビジョンセンサキット「GenX320 Starter Kit」を発表した。従来のカメラとは異なり、各ピクセルが独立して明るさの変化を検出する方式を採用し、マイクロ秒単位の応答速度と低消費電力を実現する。

GenX320 Starter Kitは、Propheseeのニューロモーフィック(脳の構造と機能から着想を得た)センシング技術をRaspberry Pi開発者コミュニティに提供する製品だ。

従来のカメラは固定間隔でフレーム全体を撮影するが、イベントベースセンサは明るさの変化(イベント)を各ピクセルが独立して非同期に検出する。変化がない場合、センサは何も報告しない。この仕組みにより、人間の目と同様に必要な情報のみを収集でき、変化のない部分の画像を再処理する時間とエネルギーを浪費しない。

結果として高効率なリアルタイムビジョンを実現し、産業オートメーション、ロボティクス、セキュリティなど、ミリ秒単位の精度が求められるエッジアプリケーションに適している。

キットの中核となるGenX320センサは、解像度320×320ピクセル、ダイナミックレンジ140dB以上、約1万fps相当のイベントレートを持つ。センサの消費電力は50mW未満だ。レイテンシは1000ルクスで150マイクロ秒未満、5ルクスで1000マイクロ秒未満に抑えられている。

キットにはGenX320センサと、MIPI CSI-2インターフェースを備えたコンパクトなカメラモジュールが含まれ、Raspberry Pi 5に直接接続できる。ミニ三脚も付属する。

レンズは2種類から選択可能だ。M12マウントで視野角76度のタイプと、M6マウントで視野角104度のタイプがある。

開発者向けに、Propheseeは専用ドライバー、データ記録、再生、可視化ツールをGitHubで公開している。PythonとC++ APIをサポートするOpenEBも利用できる。

ユーザーはProphesee Knowledge Centerにアクセスでき、ユーザーガイド、FAQ、ダウンロードリポジトリを参照できる。アイデアを共有するコミュニティフォーラムも用意されている。

イベントベースビジョンは、従来のフレームベースカメラでは困難なプロジェクトに適している。ドローンの飛行追跡、ロボティクスにおける障害物の分類と回避、セーフティカメラによる転倒や侵入の検知などの用途がある。産業IoTでは、超高速フレームレート処理により、生産ラインで欠陥がコスト増大を招く前に検出できる。

具体的な応用分野として、Propheseeはドローン(検出と追跡、障害物回避、リアルタイムSLAM、GPS非依存ナビゲーション)、産業IoT(3Dスキャン、振動監視、スパッタ追跡、高速欠陥検出)、監視(転倒検出、侵入監視、スマートオフィス、顧客分析)を挙げている。

Raspberry Pi公式ブログによると、キットの価格は約300ドルから400ドル(約4万5000円から6万円)とされている。購入は代理店を通じて可能だ。

Propheseeは2014年設立のフランス企業で、イベントベースビジョン技術の開発を専門としている。


関連情報

製品ページ(Prophesee)

Raspberry Pi財団による紹介記事

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