カリフォルニア大学、芸術制作向け協調ロボットシステム「WORM」を発表

FabScene(ファブシーン)

カリフォルニア大学サンタバーバラ校の研究者が、芸術制作に特化した協調ロボットシステム「WORM」を発表した。職人が手でロボットを動かして動作を教え、パラメータに従って繰り返させる仕組みだ。プログラミングの専門知識がなくても、絵画や粘土彫刻といった複雑な作業をロボットに学習させることができる。

WORMは「Workflow-Oriented Robotic Manufacturing」の略で、特定のロボット製品ではなく、芸術志向の協調ロボットを構築するためのシステムだ。制御インターフェースと工芸品特化型コントローラー、それに対応するエンドエフェクターで構成される。

このシステムのアプローチは、工作機械における「会話型プログラミング」に近い。会話型プログラミングは、オペレーターが単純な操作から複雑なプログラムを作成できる手法で、たとえば放射状パターンのフライス加工ポケットを簡単な指示から生成する。WORMはこの概念を芸術分野に応用している。

手で教えてパラメータで繰り返す

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画像出典元:YouTube

具体例として、粘土の表面に数千個の小さな装飾的なマークを彫る作業を考えてみよう。この作業は時間がかかり反復的だが、ロボットにプログラムするのも困難だ。各マークには器用さと複数軸での動きが必要になる。

WORMではまず、職人が協調ロボットを手で動かして複雑な動作(マークを彫る)を教える。次に、その動作をどう繰り返すかをパラメータで指定する。たとえば「Z軸周りに5度ずつ回転させながらマークを繰り返す」といった指示だ。

研究チームが製作した絵画用のデモロボットには、オペレーターが絵筆を動かしてロボットを誘導するためのデュアルハンドルが付いている。トレーニング後、オペレーターはロボットに動きを軸の周りで繰り返したり、パスに沿って実行したりするよう指示できる。

Arduino Nanoベースの制御インターフェース

制御インターフェースはArduino Nanoボードを中心に構築されている。ジョイスティックとスイッチで操作し、LCDディスプレイでステータス情報を表示する。Arduinoはシリアル通信を介してPythonベースのデスクトップアプリケーションと通信し、ロボットアーム(Universal Robotics UR10e協調ロボットアーム)を制御する仕組みだ。

このトレーニング手法の利点は、技術的な専門知識を必要としない点にある。また、職人と作品の間の繋がりを維持できることも重要だ。完全自動化されたCNCマシンと手作業の中間に位置するアプローチとして、芸術制作の効率化に貢献する可能性がある。

研究成果は学術論文として公開されており、ACMデジタルライブラリで閲覧できる。

関連情報

Arduino Blog – WORM collaborative robots

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