米陸軍、大気から水を生成する技術の実証実験へ 廃熱を利用し飲料水を確保

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米陸軍工兵研究開発センター(ERDC)とAirJoule Technologiesが、大気中の水蒸気から飲料水を生成する技術の共同研究開発契約を2025年10月7日に締結した。戦術発電機から発生する廃熱を利用し、環境条件や地理的制約に左右されない水供給システムの開発を目指す。契約期間は3年間。

AirJoule Technologiesは、大気中の水蒸気を捕集して飲料水に変換する技術プラットフォーム「AirJoule」を開発している企業だ。今回の協力では、ERDCの廃熱回収システムとAirJouleの大気中水分抽出技術を組み合わせ、幅広い環境条件と地理的条件で効果的に動作する飲料水供給システムの開発を進める。

AirJouleの技術は、先進的な吸着材料を使用して大気中の水蒸気を捕集する。吸着材が水蒸気で飽和状態になると、チャンバーを密閉し、真空状態と廃熱を組み合わせて水蒸気を放出させる。放出された水蒸気は真空コンデンサー内で液体の水に凝縮される仕組みだ。複数のチャンバーで捕集と放出のサイクルを同時に実行することで内部の熱を再利用し、エネルギー効率を高めている。

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AirJoule技術の仕組み。吸着材料が水蒸気を捕集し、廃熱と真空で水を生成する。画像出典元: AirJoule Technologies

AirJoule Technologies最高経営責任者のMatt Jore氏は、この技術が表層水や地下水が利用できない、あるいは汚染されている環境で特に有効に機能すると説明している。軍事作戦においては、従来の水の補給任務では人員がリスクにさらされ、燃料と輸送資源を大量に必要としていた。廃熱から水を生成できるシステムは、燃料消費と兵站上の脆弱性の両方を軽減できる可能性がある。

ERDCは陸軍や国防総省、民間機関向けに土木・軍事工学、地理空間科学、水資源、環境科学における課題解決を担う研究機関だ。今回の共同研究により、熱駆動型大気中水生成技術の進展を加速し、将来の持続可能性と回復力に関する能力開発に活用する見込みだ。

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