鉄道タンク車の貫通を防ぐ複合金属フォーム、米ノースカロライナ州立大が実証

FabScene(ファブシーン)

米ノースカロライナ州立大学の研究チームが、「複合金属フォーム」(CMF: Composite Metal Foam)と呼ばれる軽量材料が、鉄道タンク車への衝撃を吸収し貫通を防ぐ能力を持つことを実証した。固体鋼よりも軽量でありながら、より効率的にエネルギーを吸収できるという。危険物を輸送するタンク車の安全性向上につながる可能性がある。

CMFは、ステンレス鋼やニッケルなどの金属製の中空球体を、金属マトリックス内に埋め込んだ構造を持つ。軽量でありながら圧縮力の吸収性能に優れ、従来の金属や合金と比較して断熱性能が高く、高温下での強度も高いという特性を持つ。核物質、危険物、爆発物といった熱に敏感な材料の保管や輸送への応用が期待されている。

研究を主導した同大学機械航空宇宙工学科のAfsaneh Rabiei教授は、鉄道タンク車が酸や化学物質から石油、液化天然ガスまで幅広い危険物を輸送しており、その安全性が重要だと指摘する。米国運輸省は、タンク車の製造に使用される材料に対して厳格な試験要件を設けている。

貫通試験の実施と結果

FabScene(ファブシーン)
左から、CMFをインデンター上部に設置した状態、センサーを取り付けたCMF、貫通試験後のCMF。画像出典元:ノースカロライナ州立大学

研究チームは、実際の鉄道タンク車の外殻に使用される高品質鋼板を使用し、重量約13万6774kgのラムカーを用いた貫通試験を実施した。ラムカーの先端には、152.4mm四方の断面を持つ鋼製のインデンター(押し込み具)が取り付けられている。時速約8.3km/hで衝突させると、インデンターとラムカーの組み合わせにより368キロジュールの力が発生する。

ベースライン試験では、インデンターが鋼板に大きな穴を開けた。一方、実験試験では厚さ30.48mmのCMFパネルをインデンターの先端に配置した。その結果、CMFが力の大部分を吸収し、インデンターとラムカーが鋼板から跳ね返され、鋼板には小さなへこみができただけだった。

Rabiei教授は、軽量のCMFが固体鋼よりも効率的に貫通や衝撃のエネルギーを吸収できることが明らかになったと述べている。

研究チームは、CMFがどの程度の厚さで所望の保護レベルを提供できるかを決定できる数値モデルも開発した。このモデルを使用することで、用途に応じて必要なCMFの厚さを計算できる。研究チームは、より薄いCMFパネルでもさらに優れた性能を発揮する可能性があると考えており、CMFの使用効率を最大化できるとしている。

研究の第一著者であるAman Kaushik氏は、現在同大学のポスドク研究員を務めている。論文は2025年11月4日付けで学術誌「Advanced Engineering Materials」に掲載された。

関連情報

ノースカロライナ州立大学のプレスリリース

fabsceneの更新情報はXで配信中です

この記事の感想・意見をSNSで共有しよう
  • URLをコピーしました!