
ライターとして、そしてものづくりに取り組むMakerとして、AIの恩恵にあずからない日はない。文章作成にもコーディングにもAIが活躍してくれるが、ふと「いずれ僕もAIに代替されてしまうのでは?」と不安になることもある。僕という人間を忘れ去られないためには、仕事でお世話になる皆さんに、初対面からインパクトを残すことも必要だろう。
ビジネスシーンにおける「はじめまして」といえば、やはり名刺交換。凝ったデザインで差をつけるのもいいが、名刺入れそのもので主張できたらどうだろう……?


そこで作り上げたのが、この「名刺を渡す前から光る名刺ケース」だ。ケース自体が光って相手の視線を引きつける。こちらからは緑のリングで静かに挨拶し、相手の名刺を受け取ったら虹色で喜びを伝える。そんな小さな演出がハマれば「おっ?」と印象に残してもらえるに違いない。
制御に使われているのは、クレジットカードサイズの開発ボード「Carduino」。小型・薄型のマイコンはいくつもあるが、Arduino UNO互換機としての機能を備えた汎用性が魅力のプロダクトだ。これからの挨拶に革命をもたらす(かもしれない)このボードを掘り下げていこう。

Lチカまでの最短経路──名刺サイズの「Carduino」

「Carduino」は、クレジットカードサイズ、厚さわずか2.5mmのArduino UNO互換機だ。akita11氏が設計・開発し、ビット・トレード・ワンから製品化された経緯を持ち「カードケースや財布に忍ばせておけるArduino」として、同社のオンラインストアなどでおよそ4000円で入手できる。


名刺ケースやArduino UNOと並べてみるとこの通り。基板自体の縦横サイズはArduino UNOと大きく変わらないが、入出力端子のソケットが横倒しになり、厚みがかなり薄くなっている。高さ方向に出っ張っていたパーツはスリム化もしくは取り除かれ、書き込み端子もType-BからType-Cへ刷新。Arduino UNO 初代の登場から15年ほどの月日が経つが、ここまでスリムになった互換機が出るとは誰も想像していなかっただろう。

ボード裏面にはLチカまでの手順がシルク印刷されており、資料にあたらずとも開発を始められる。製品ページにある「財布等に忍ばせておけば、いつでもその場でArduinoUNO互換環境を使うことができます。 『Arduinoは興味あるんだけど、まだ触ったことないんだよね』という人に会ったら、その場でArduino開発の世界を体験してもらいましょう。」という言葉通り、スッと出してパッと開発する、Lチカまでの最短距離を目指した遊び心と実用性が同居した設計だ。
電子部品を名刺サイズにまとめていく

ここまでの薄さを見ると、やはり名刺入れに仕込みたくなるもの。ただ忍ばせても良いが、どうせならCarduinoの機能をフルに活用したい。紙の名刺を取り出す前から、名刺入れ自体を光らせることだって、Arduino UNO互換機なら難しくはないはずだ。「名刺を渡す前から光る名刺ケース」を組み上げていこう。

Carduino本体にもビルトインLEDは搭載されているが、より目を引く演出を狙って別の電子部品を採用した。今回は、Carduinoと同様にコンパクトながら高機能なNeoPixel Ring(外径45mm)を使用。Carduinoの短辺に余裕を持って収まるサイズで、名刺入れに組み込んでも違和感がない薄さだ。Arduino IDE環境での動作確認やプログラミングも、ジャンパワイヤやワニ口クリップを使いながら問題なく行えた。

さらに、ボタン操作で光のパターンを切り替えるためにタクトスイッチを追加し、ユニバーサル基板にまとめて半田付けした。入出力ピンはArduino UNOと同じ数だけあるので、そうそう使い切ることはないだろう。ただし、Carduinoのピンソケットは横向きに配置されているため、ジャンパワイヤがやや抜けやすい点には注意しよう。ワイヤの先端を軽く曲げたり、別のコネクタ端子を使うなど、取り回しには若干の工夫が必要だ。


今回はユニバーサル基板の両端に信号線を集約し、短いジャンパワイヤでCarduinoの端子に差し込む方式を採用した。まず片側を差し込み、もう片方を後から差し込んで接続が完了。うまく配線を収めるための工夫は、使い手の技量が試されるポイントかもしれない。
3Dプリントでケースを作って完成!

最後に、合体させたCarduinoとユニバーサル基板、そして紙の名刺を収めるケースを3Dプリントで制作した。NeoPixel Ringとタクトスイッチが触れる部分は肉厚を約0.5mmに設定し、光が程よく拡散され、スイッチも上からたわませて押し込めるようになっている。


それぞれのアイテムを格納し、プログラムを書き込んだら完成!ボタンを押すたびに、緑色のループ→ランダムで点灯→消灯のパターンを切り替えられる。名刺交換のTPOをわきまえつつ、場に合わせて光り方を変えてみよう。Arduinoスケッチは下記の通りだ。
#include <Adafruit_NeoPixel.h>
int DELAYVAL = 100;
#define PIN 6 // 信号用のピンを指定
#define NUMPIXELS 16 // LEDの数を指定
const int DIN_PIN = 18;
int state = 0;
Adafruit_NeoPixel pixels(NUMPIXELS, PIN, NEO_GRB + NEO_KHZ800);
void setup() {
pixels.begin();
pinMode(DIN_PIN, INPUT_PULLUP);
Serial.begin(9600);
}
void loop() {
int value;
value = digitalRead(DIN_PIN);
Serial.println(value);
if (value == 0) {
state++;
Serial.print("current state is ");
Serial.println(state);
if (state == 3) {
state = 0;
}
}
switch (state) {
case 0: // 緑
pixels.clear();
DELAYVAL = 100;
for (int i = 0; i < NUMPIXELS; i++) {
pixels.setPixelColor(i, pixels.Color(0, 150, 0));
pixels.show();
delay(DELAYVAL);
}
break;
case 1: // カラフル
DELAYVAL = 10;
for (int i = 0; i < NUMPIXELS; i++) {
pixels.setPixelColor(i, pixels.Color(random(255), random(255), random(255)));
pixels.show();
delay(DELAYVAL);
}
break;
case 2: // 色を消す
for (int i = 0; i < NUMPIXELS; i++) {
pixels.setPixelColor(i, pixels.Color(0, 0, 0));
pixels.show();
delay(DELAYVAL);
}
delay(1000);
break;
}
}

光る名刺ケースでインパクトを与えたあとは、中のCarduinoを取り出して見せるもよし、その場で一緒にLチカを楽しむもよし。会話のきっかけとしても、ものづくり談義を広げるネタとしても活躍してくれるだろう。
Carduinoのメリットは、Arduino UNO互換の開発しやすさと薄型形状を両立している点にある。筆者も制作期間中にCarduinoを持ち運んでいたが、カバンの小物入れはいつもよりすっきりとしていたのを覚えている。コンパクトさを突き詰めるなら別のボードの選択肢もあるだろうが、開発環境の汎用性とカードサイズという遊び心の組み合わせで、他にないユニークな魅力を感じさせてくれた一枚だ。

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