
自転車フレームを自作する場合、金属チューブの溶接や専門的な接合技術が必要となる。工具や技術的な障壁が高く、個人のMakerが気軽に取り組めるテーマではなかった。この課題に対し、あるMakerが3Dプリント製のラグ(接合部品)と竹製チューブを組み合わせる手法で、オープンソースのDIY自転車フレームシステムを開発している。
Reddit上で「OpenFrame」として公開されたこのプロジェクトでは、PA12-CF(カーボンファイバー強化ナイロン12)フィラメントでラグをFFF方式で造形し、CNC加工した竹ベニアチューブとエポキシ接着剤で接合する。完成したフレームの重量は1890グラムで、金属フレームと同程度となっている。
製作プロセスと安全性への議論

造形にはCreality K2シリーズの3Dプリンターを使用し、PA12-CFフィラメントを100%充填率で出力した。チューブ部分にはMOSO Bamboo N-visionという竹ベニア材を採用し、接着にはWest System Epoxy 105樹脂と206硬化剤を使用している。
プロジェクト実行者のCodeCritical5042氏によると、フレームは真っ直ぐに組み上がり、初回走行時には異音も発生しなかったという。投稿の更新情報では、約15kmの走行テストを実施したことが報告されており、テスト走行後もPA12-CF製ラグにクラックや異音、接合部の動きは見られず、フレームは真っ直ぐな状態を保っているとしている。
ただし、同氏は「いずれは破損することを認識している」と明言し、これは学習プロジェクトであって完成品ではないと位置付けている。今後数週間は限定的な走行テスト、静的荷重試験、繰り返し応力サイクル試験を継続し、走行後は毎回すべてのラグを構造検査して疲労の兆候を追跡する方針だ。
Reddit上では多数のコメントが寄せられ、技術的な観点からの議論が展開された。FFF方式の3Dプリント部品は層間接着強度が構造上の弱点となるため、荷重方向によっては破損リスクがあるとの指摘が複数見られた。プラスチック材料は金属のように曲がって故障を予告するのではなく、破断時には鋭利な破片が生じる可能性があるという懸念も示された。
自転車フレーム製作の経験者からは、ヘッドチューブ部分やリアドロップアウト(後輪取り付け部)、ボトムブラケット周辺が特に高負荷を受ける箇所であり、層の配向を考慮した設計が必要との助言があった。また、走行時の振動や路面からの衝撃によって、静的荷重テストでは検出できない疲労破壊が発生する可能性も指摘された。
建設的な提案としては、カーボンファイバーやガラスファイバーでラグ部分を巻いて補強する手法、金属積層造形でチタンやステンレス製ラグを製作する方向性、ISO 4210規格に基づいた構造試験の実施などが挙げられた。一部のコメントでは、公道走行よりも屋内トレーナー専用フレームとしての活用が、より安全な実験環境になるとの意見も見られた。
同氏は長期的な目標として、オープンソースのDIY自転車フレームシステムの構築を掲げている。ダウンロード可能なファイル、部品表、段階的な組み立て説明書を提供し、誰でも独自の自転車を製作できる環境を目指すとしている。また、屋内トレーナー専用フレームの開発も並行して進めており、Kickr Coreのようなスマートトレーナー向けの構造で、公道走行時よりも安全な環境で実験を重ねられる用途として位置付けている。
次のステップとして、カーボンファイバー巻きや金型を使用した製法の研究、ボルトによる補強、レーザーカットしたステンレス製コネクターの活用なども検討しているという。プロジェクトの詳細は公式WebサイトおよびInstagramアカウントで公開されている。

