スイスでEVワイヤレス充電の実証実験、雪や雨でも効率90%を達成

FabScene(ファブシーン)

スイス連邦材料試験研究所(Empa)は、電気自動車(EV)のワイヤレス充電を実環境下でテストした「INLADE」プロジェクトの結果を発表した。雪や雨、駐車位置のずれといった条件でも約90%の充電効率を達成し、ケーブル充電と同等の性能を確認した。

INLADEプロジェクトはエネルギー事業者Eniwa AGが主導し、Empaのほかスイス連邦エネルギー局(SFOE)、チューリッヒ州、アールガウ州が支援した。2023年11月末に開始し、約2年間にわたって技術検証と規制面の課題整理を進めてきた。

ワイヤレス充電は、駐車スペースに埋め込んだ送電コイルから車両底部の受電コイルへ磁界を介してエネルギーを伝送する仕組みだ。スマートフォンや電動歯ブラシで普及している技術をEV向けに応用した。車両を正しい位置に駐車すると充電が自動で始まる。

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車内に後付したディスプレイで最適な駐車位置を表示させている様子。車体とコイル間に障害物が無いかも確認できるという。画像出典元:Empa

プロジェクトではAMAGなどのパートナーが既存のEVを改造し、受電コイルと充電管理システムを統合した。電磁両立性(EMC)試験と安全性試験を経て、スイスで初めてワイヤレス充電対応EVが公道走行の認可を取得した。ケーブル充電も引き続き可能だ。

Empaはデュベンドルフの「move」モビリティ実証施設にワイヤレス充電ステーションを設置し、雪、雨、気温変化、駐車位置のずれといった実環境条件でテストした。その結果、充電効率は約90%で安定し、ケーブル充電と同等だった。Empa化学エネルギー担当のMathias Huber氏は「この技術は実用環境で信頼性高く動作する」と述べている。

研究チームはワイヤレス充電の利点として、双方向充電との相性の良さを挙げる。EVは1日平均約23時間停車しており、駐車中に自動で電力網に接続できれば、車載バッテリーを電力系統の調整に活用しやすくなる。ケーブルを手動で接続する必要がないため、車両が電力網につながる時間が大幅に増える。太陽光発電の電力が余る日中に充電すれば、電気代の削減にもつながる。


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