米FCC、外国製ドローンの新規販売を禁止——DJIやAutelの新モデルが米国市場から締め出しへ

FabScene(ファブシーン)
画像出典元:DJIプレスリリース

米連邦通信委員会(FCC)は2025年12月22日、外国製ドローンおよびその重要部品を「Covered List」(通信機器の安全保障上の懸念リスト)に追加したと発表した。DJIやAutel Roboticsを含む外国製ドローンの新モデルは、今後FCC認証を取得できなくなり、米国への輸入・販売が事実上不可能になる。既存モデルの販売や使用は引き続き可能だが、世界最大手のDJIにとっては米国市場からの新製品締め出しを意味する。

今回の決定は、2025年度国防権限法(NDAA)に基づく。同法は、DJIやAutelなどの外国製ドローンについて2025年12月23日までに安全保障上の審査を完了するよう求めていた。審査が完了しなければ自動的にFCCのCovered Listに追加される仕組みだったが、期限までに審査は完了せず、12月21日にホワイトハウスが召集した省庁間会議が「外国製ドローンは米国の安全保障に容認できないリスクをもたらす」と判断した。

FCCは、DJIやAutelだけでなく、すべての外国製ドローンと重要部品(通信機器、フライトコントローラー、ナビゲーションシステム、バッテリー、モーターなど)を対象とした。米国で組み立てられたドローンでも、外国製部品を使用していれば規制の対象となる可能性がある。

FCCのBrendan Carr委員長は「トランプ大統領は米国の空域を守り、米国のドローン産業の優位性を確立すると明言してきた」と述べた。発表文では、2026年FIFAワールドカップや2028年ロサンゼルス五輪など大規模イベントを控え、犯罪組織やテロリスト、敵対的な外国政府によるドローンの脅威に対処する必要性を強調している。

DJIは声明で「FCCの決定に失望している」と表明した。「DJI製品は市場で最も安全で信頼性が高く、米国政府機関や独立した第三者機関による複数の審査で検証されてきた。データセキュリティに関する懸念は根拠がなく、保護主義的だ」と反論した。中国外務省の林剣報道官も「差別的だ」と批判し、米国に「中国企業に公正で差別のない環境を提供すべきだ」と求めた。

既存モデルへの影響は限定的だ。認可済みのドローン(Mini 4 Pro、Mavic 4 Pro、Avata 2など)は引き続き販売・使用できる。ただし、FCCは過去に認可した製品を事後的に取り消す権限を保持しており、将来的に規制が強化される可能性は残る。

DJIは世界のドローン市場で約70%のシェアを持つ。米国のドローンサービス事業者団体の調査では、会員の約3分の2が「DJIがなければ廃業する」と回答しており、代替製品の不足が課題として指摘されている。米国製ドローンメーカーのSkydioは政府・企業向けに特化しており、一般消費者向け製品は限られる。

関連情報

FCC発表文(PDF)

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