
長距離ドライブで後部座席の子供たちが退屈している。タブレットを渡しても、充電ケーブルがごちゃごちゃしたり、Wi-Fiがないと動画が見られなかったりする。市販の車載エンターテインメントシステムは高価で、取り付けも面倒だ。
エンジニアのAlbert David氏がこの課題に対して製作したのは、Raspberry Pi 4とKodiを使った分散型インフォテインメントシステムだ。2024年4月に公開され、2026年2月7日に大幅にアップデートされた本プロジェクトは、各座席に独立したタッチディスプレイを設置し、完全オフラインで動画や音楽を楽しめる。
1本のケーブルで電源とネットワークを供給
このシステムの特徴は、PoE(Power over Ethernet)を採用した点だ。各Raspberry Pi 4とタッチディスプレイは、1本のイーサネットケーブルで電源とネットワーク接続の両方を受け取る。車内配線が大幅に簡素化され、追加の画面も容易に増設できる。
構成は分散型アーキテクチャを採用している。中央のマルチヘッドコントローラーは不要で、各座席のRaspberry Pi 4が独立してKodiを実行する。GL-MT300N-V2ポケットルーターがDLNAメディアサーバーとDHCPサーバーとして機能し、USBドライブに保存されたメディアファイルをローカルネットワーク経由で全画面に配信する。
1画面あたりのコストは約180〜200ドル(約2万5000〜2万8000円)で、Raspberry Pi 4、PoE HAT、フルHDタッチディスプレイが含まれる。PoEスイッチとポケットルーターは全画面で共有する。
10ms以下の同期精度を実現

2026年2月のアップデートでは、いくつかの重要な改善が加えられた。事前構築済みSDカードイメージが提供され、手動インストールが不要になった。同じイメージを全てのSDカードにフラッシュするだけで、各Raspberry PiがMACアドレスから一意のホスト名を自動生成し、相互に自動検出する。
同期機能も大幅に向上した。統合された「kodisync」により、フレーム単位の正確な同期を実現し、デバイス間の同期ずれは10ms以下に抑えられる。以前のバージョンでは複数回の同期試行が必要だったが、現在は1回で確実に同期する。
同期の仕組みはシンプルだ。任意のRaspberry Piに3キーUSBキーボードを接続し、KEY_1を押すと、同期スクリプトが現在再生中のメディアと位置を読み取り、ネットワーク上の全デバイスを検出する。そして全てのプレーヤーで同じメディアファイルを開き、正確に同じフレームで一時停止させ、同じ位置にシークしてから同時に再生を再開する。
バージョン2では完全自己ホスティング化
Albert David氏は、ポケットルーターを不要にしたバージョン2も公開している。1台のRaspberry Piが自動的にマスターとなり、DHCP、DNS、NTP、DLNAサーバーを提供する。これによりシステム構成がさらにシンプルになった。
ソフトウェアスタックは全てオープンソースだ。各Raspberry PiでKodiが動作し、DLNA クライアント機能を内蔵する。ポケットルーターではOpenWrtとminidlnaが動作し、メディアファイルをDLNA経由で配信する。同期ソフトウェア「media-mux」が全画面の再生を調整する。
ソースコードと事前構築済みイメージはGitHubで公開されており、ハードウェアの構築ガイドと部品表も提供されている。完全オフラインで動作するため、携帯電波が届かない場所でも利用できる。
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