落としても割れず、壊れても熱で直せる新プラスチック、オランダで開発

FabScene(ファブシーン)

オランダのワーヘニンゲン大学の研究チームは2026年2月5日、従来の材料理論では存在し得ないはずの新しいプラスチック素材「コンプレキシマー(compleximer)」を開発したと発表した。ガラスのように容易に成形でき、かつプラスチックのような衝撃耐性を持つという、これまで両立不可能とされていた特性を併せ持つ。研究成果は学術誌「Nature Communications」に掲載された。

研究を主導したのは、博士課程学生のSophie van Lange氏とJasper van der Gucht教授(Physical Chemistry and Soft Matter担当)。van der Gucht教授は「帯電した材料が予想と根本的に異なる挙動を示すことを実証できたことが、現段階で最も興味深い」と語る。

材料科学の分野では数十年にわたり、ガラス状物質について「ゆっくり溶けて加工しやすい材料ほど、もろくなる」という経験則が存在していた。しかし、コンプレキシマーはこの常識を覆す。琥珀色をしたこの素材は、加熱するとガラスのように伸ばしたり吹いたりして成形できる一方で、プラスチックのような衝撃耐性を維持する。

従来のプラスチックとの最大の違いは、分子構築ブロックの結合方法にある。通常のプラスチックは、長い分子鎖が化学的架橋で「接着」されている。これに対しコンプレキシマーでは、分子鎖が物理的な引力で結合している。分子鎖の半分が正電荷を、もう半分が負電荷を帯びており、磁石のように引き合うことで結合を保つ。

「単一の出口から2つの材料を使い、それらを磁石のように引き寄せ合わせて固定します。化学的に固定されているわけではありません」とvan Lange氏は説明する。この物理的結合は化学結合よりも長距離で作用するため、分子鎖の間により多くの空間が生まれる。この「分子レベルの呼吸空間」が、高温で成形可能でありながら衝撃を吸収できる構造を実現している。

現在、研究チームが製造したサンプルは数グラムのみだが、その効果は明確だ。加熱すればガラスのように捏ねたり吹いたりできる一方、プラスチックのように衝撃に強い。

FabScene(ファブシーン)
コンプレキシマーをねじ曲げた際の写真(画像出典元:プレスリリース)

持続可能性の観点でも期待が寄せられている。物理的結合を利用しているため、従来のプラスチックより修理が容易だ。加熱によって分子間の引力が弱まるため、穴や損傷を熱で修復できる可能性がある。また、上級研究員のWouter Post氏は「ほとんどの応用研究はリサイクルの改善に焦点を当てているが、この研究は修理しやすく、生物学的に非常に早く分解するプラスチックへの扉を開く」と指摘する。

van der Gucht教授は、今後数年間でバイオベース版の開発を優先する方針を示している。現在のコンプレキシマーは化石燃料ベースの原料を使用しているが、バイオベース化によって、この科学的マイルストーンを持続可能な材料への世界的な移行に貢献させることを目指している。

ただし、van der Gucht教授とvan Lange氏は、現時点では実用化よりも基礎研究を重視している。「現在の理論では存在しないはずの材料から始め、材料がどのように振る舞うかについての新しい疑問で終わる。そこから本当の仕事が始まる」とvan der Gucht教授は語った。

関連情報

Wageningen researchers break materials theory with a new type of plastic

fabsceneの更新情報はXで配信中です

この記事の感想・意見をSNSで共有しよう
  • URLをコピーしました!