米4州で3Dプリンターに「銃パーツ検出ソフト」搭載を義務化する法案が相次ぐ――カリフォルニアでは州認定機種以外の販売禁止も

FabScene(ファブシーン)

アメリカのワシントン州、カリフォルニア州、ニューヨーク州、コロラド州の4州で、3Dプリンターに銃器パーツの製造を検出・阻止するソフトウェアの搭載を義務付ける法案が2026年2月時点で計7本提出されている。いずれも銃規制を目的とした立法だが、規制対象が「3Dプリンター」という汎用的なツールそのものに及んでおり、教育機関やMaker、中小製造業への影響を懸念する声が3Dプリンティングコミュニティから上がっている。

最も踏み込んだ内容なのが、カリフォルニア州で2026年2月17日に提出された法案だ。「California Firearm Printing Prevention Act」(カリフォルニア銃器プリント防止法)と名付けられたこの法案は、州司法省(DOJ)が認定した「銃器設計図検出アルゴリズム」を搭載した3Dプリンターだけに販売を許可する仕組みを提案している。メーカーは販売する機種ごとに州司法省へ認定を申請し、認定リストに掲載されなければ、2029年3月1日以降カリフォルニア州内での販売が禁止される。検出ソフトウェアの無効化や改変は軽罪として扱われ、違反1件につき最大2万5000ドル(約390万円)の民事罰金が科される内容だ。

ワシントン州で提出された法案の一つは2026年2月16日に州下院を57対39で通過し、州上院の審議に移った。3Dプリンターやフライス盤を使った銃器パーツの個人製造を禁止する内容で、別の関連法案では「相当な技術力を持つ利用者でも回避できない」レベルの検出機能を全3Dプリンターに搭載するよう求めている。ニューヨーク州では単独の法案に加え、州予算案の中にCNCミルや切削加工機まで含む規制条項が盛り込まれた。コロラド州の法案はさらに踏み込み、銃器パーツの3Dプリントだけでなく、その設計ファイル(CADデータやGコード)の所持自体を犯罪とする。初犯は最大364日の禁固刑と5000ドル(約78万円)の罰金、再犯は重罪として1~3年以上の禁固刑と最大10万ドル(約1600万円)の罰金が科される。

技術コミュニティからの反対は根強い。オープンソースハードウェア企業のAdafruitは公式ブログで、3Dプリンターが読み取るGコード(ノズルの動作命令)には「何を造形しているか」という情報が含まれておらず、形状だけで銃器パーツかどうかを判定することは技術的に困難だと指摘した。デスクトップ型プリンターにはリアルタイムの形状解析を処理する能力がなく、大半の機種がオープンソースファームウェアで動作するため、仮にブロック機能を搭載しても容易に回避できるとしている。Adafruitは「銃の賛否にかかわらず、違法なものを作った人を訴追すべきであり、教室や図書館やガレージにある全てのツールに無意味な監視ソフトを載せるべきではない」と主張した。

カリフォルニア、ニューヨーク、ワシントンの3州だけで米国の人口とGDPの約4分の1を占める。仮にこれらの州で法案が成立すれば、3Dプリンターの主要メーカーは対象州向けの専用モデルを開発するか、検出ソフトウェアを全世界向け製品に標準搭載するかの選択を迫られる。連邦法(国全体の法律)を経ずに、事実上の全米規模の規制が成立しうる構図だ。

日本では銃器の所持自体が銃刀法で厳しく規制されており、同種の法案が直接導入される状況にはない。ただし、主要メーカーが米国市場向けにファームウェアへ検出・ブロック機能を組み込んだ場合、同じファームウェアが日本向け製品にも適用される可能性は否定できない。VORON、Positron、RatRigといったオープンソースの自作キットは認定プロセスに対応する手段を持たず、影響を受ける恐れもある。法案の動向は、3Dプリンターを使うMakerや教育機関にとって注視すべき問題だろう。

各法案の現状や議員への連絡先、反対活動の方法をまとめたWebサイト「dont-ban-3dprinters.com」が公開されている。

関連情報

dont-ban-3dprinters.com
カリフォルニア州法案全文(州議会公式)
ワシントン州法案概要(州議会公式)
コロラド州法案概要(州議会公式)
Adafruit公式ブログ記事

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