
就活で200社近くに応募しても返事すらもらえなかった英国の卒業生が、3Dプリントで建物の外壁用彫像を作ったことで一転、採用のオファーを受けた。RedditユーザーのMain-Fly-3977氏がr/3Dprintingに投稿したこの話は、1万以上のいいねを集めた。
彼が受けた依頼は、地元の不動産管理者から「建物の正面に置く像が欲しい」というものだった。業者に相談したところ、石膏で作るなら3ヶ月・2500ポンド(約53万円)という見積もりが出た。それが高すぎると感じた管理者が「3Dプリントで速くできないか」と相談してきたのが始まりだった。Main-Fly-3977氏はそれまでEtsyで小物を販売したり、個人向け3Dプリントサービスを請け負ったりしながら生活していた。
制作はiPhone ProのLiDARセンサーとアプリPolycamを使った3Dスキャンからスタートした。足場に登りながら既存の像をスキャンして書き出したメッシュデータは、ポリゴン数が粗く、そのままでは使えない状態だった。Nomadでリスカルプトし、Fusionを組み合わせて細部を整え、Bambu Slicerでブロックに分割してから出力データに仕上げた。「スキャンのポリゴンが荒すぎて手動で大量に彫り直した。正直この工程が一番時間を食った」と本人はコメントしている。
出力にはBambu A1×2台、P1S、P2S、A1 mini×2台の計6台を動かし、総出力時間1200時間超・実稼働15日間で完成させた。材料のPETGは総重量30〜40kg。英国は夏でも気温が30℃を超えることはほとんどないため、屋外での耐久性は許容範囲と判断した。像の底部ブロックにはFEA(有限要素解析)を簡易的に行い、下部ほどインフィルを高くして荷重に耐えられるよう設計している。接合は産業用接着剤、プラスチックウェルダー、フィラー、3Dペン、はんだを組み合わせ、最後に厚塗りペイントとクリアコートで仕上げた。
材料費は約230ポンド(約4万9000円)、受注金額は1000ポンド(約21万円)だった。Main-Fly-3977氏自身「間違いなく安すぎた。でもこれが最初で、たぶん最後のこの規模の仕事になると思う」と認めている。
そして出来上がった像を見た管理者が、想定外の一言を言った。「像を設計してプリントできるなら、スプレッドシートを扱ったり人と話したりすることは問題ないだろう」。その場で雇用の話になり、Main-Fly-3977氏は採用されたという。200社近くに応募しても一切返事がなかったという就活の末に、ポートフォリオでも履歴書でもなく、建物に取り付けられた彫像が仕事をもたらしたことになる。
コメント欄では「型を取ってコンクリートで流した方が耐久性がある」という声が多くついた。技術的には正論だが、Main-Fly-3977氏はこう返している。「予算と時間が許さなかった。それに、コンクリートだったら施工業者が一人で足場まで持ち上げるのはまず無理だった」。PETGの軽さが、設置の現実的な課題を解いていた。

