10年間一筋で育てたwenaを携えソニーから独立、「wena X」で再始動

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ソニーのスマートウォッチブランドwenaを引き継いで独立したaugment AIは、新モデル「wena X(ウェナ クロス)」を2026年3月17日に発表し、3月20日よりGREEN FUNDINGにてクラウドファンディングを開始する。

腕時計スタイルとスマートバンドスタイルをワンタッチで切り替えられる2way構造を採用し、専用開発のリアルタイムOS「wena OS」により80mAhの小型バッテリーで1週間の駆動を実現した。外装にはスイス製腕時計にも使われるSUS316Lを採用し、従来のイオンプレーティング比で硬度5倍以上のDLC(Diamond Like Carbon)コーティングで耐摩耗性を高めた。超早割は税込4万6800円から。

wenaは、腕時計のバンドやバックル部分にスマートウォッチ機能を組み込み、好みのアナログ時計をそのままスマートウォッチとして使えるようにするというコンセプトのブランドだ。

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歴代のWena

2015年にクラウドファンディングで当時の国内記録となる1億円超の支援を集めてスタートし、ソニーの製品として2016年から一般販売を開始。第3世代にあたるwena 3まで展開してきたが、2026年2月末をもってソニーはサービスとサポートを終了した。

その知らせを受けたのは、新入社員のときにこの事業を立ち上げ、10年間携わり続けてきた對馬哲平氏だった。

「10年間ずっとこれ一筋でやってきた。どうしても諦めきれなかった」

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augment AI 代表取締役 對馬哲平氏

ユーザーからも「次のモデルを待っている」「もっと使い続けたい」という声が届いていた。對馬氏はソニーを退職し、2025年7月にaugment AIを設立。商標と特許をソニーから引き継ぎ、開発チームのメンバーと新会社を立ち上げた。ソニーグループも出資者の1社に名を連ねており、その独立は円満なものだった。

腕時計とスマートバンドを「行き来する」、第4世代の発想

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wena Xの最大の特徴は、腕時計スタイルとスマートバンドスタイルをワンタッチで切り替えられる2way構造だ。アナログ時計のバックルに取り付ける従来の使い方はそのままに、運動や睡眠時はバックル部分を外してスマートバンド単体として使える。愛用の時計をスマートウォッチにして、なおかつ運動・睡眠データを取りたいというユーザーの声から生まれた設計で、wena 3での睡眠・運動機能の満足度が低かったことが直接のきっかけになったという。

この切り替えを成立させるために乗り越えなければならなかったのが、徹底的な小型化だった。金属筐体自体をアンテナとして機能させることでアンテナ部品を省略し、ディスプレイだけでなくバッテリーも湾曲させ、基板上の部品配置も曲面に合わせて実装密度を最大化した。さらに、生体センサーをバックル内に収める構造を特許出願し、これによって前モデル比8.5%の全長短縮を果たした。80mAhのバッテリーながら、専用開発のリアルタイムOS「wena OS」による精緻な電力制御で1週間の駆動を実現している。

「ソニーはもともと小さいものを作るのが得意な会社です。そういう経験を持ったエンジニアが集まっているのが大きい」と對馬氏は言う。開発チームは6人。機構設計、電気、ファームウェア、アプリ・サーバーの各専門家が揃い、そのうち4人はwenaを共に作り続けたソニー出身者だ。對馬氏自身も新入社員時代に機構設計部に配属され、ソニーモバイルのスマートフォン開発で小型化の技術を磨いてきた。第1世代では物理的に分離していたフレキ基板と電池を1つのユニットに収めることが可能になったのも、チップの省電力化の進化と積み重ねてきた設計ノウハウがあってのことだ。

大企業では手が届かなかった、データ活用とスピード

大組織を出たことで、できるようになったことは少なくない。ソニー時代はさまざまな制約から、健康データの活用はほぼ手が出なかった。今は自社サーバーで管理し、Google Health ConnectやApple ヘルスケアとの連携も視野に入れて開発を進めている。睡眠機能の強化に向けては、東京大学発のスリープテック企業・ACCELStarsと資本業務提携を締結し、医科学研究に基づくAI睡眠分析機能を共同開発中だ。製造はEMSのJENESISに委託し、部品調達から生産拠点の地政学的リスク分散まで同社のネットワークを活用する。

意思決定のスピードも大きく変わった。試作を外注する手続きに時間をかけていた頃とは違い、気になる点があればすぐ発注して手元で確かめられる。AIツールも制約なくフル活用できるため、「ソフトウェアエンジニアは1人で3人分ぐらいの仕事ができる」と對馬氏は語る。

「0.1%でも世界に出られる」——狙うのはニッチの深さ

目指すブランドの姿について、對馬氏は新興スマートフォンメーカーのNothingを引き合いに出した。
「全世界のスマホシェアが0.1%でも、ああいう尖ったブランドになれたらいい」

スマートウォッチ市場全体の1〜2%という小さな領域でも、自分の腕時計をスマートウォッチにしたいという明確な需要がある。wenaのユーザーの多くが他社製品と比較検討をせずに購入しているのは、代替品が存在しないからだ。大企業が参入しにくいのも同じ理由で、市場規模に対して設計の難度が高すぎる。規模の小さなスタートアップだからこそ、ニッチな市場に深く向き合える——對馬氏はそう考えている。

2026年3月20日から始まるクラウドファンディングは、2015年の最初の挑戦以来11年ぶりとなる。サイト上の目標金額は1000万円だが、個人的には当時と同じ「1億円超え」を目指したいと對馬氏は話す。ソニーによるサポート終了から3週間というタイミングを選んだ背景には、既存ユーザーにできるだけ早く次の選択肢を届けたいという考えがある。

クラウドファンディングはGREEN FUNDINGにて2026年3月20日11時から6月末までを予定する。超早割は先着500本限定で、loop rubberモデルが税込4万6800円(18%OFF)、metal/leatherとループラバーバンドのセットが税込5万6800円(16%OFF)。発送は2026年12月末から順次予定する。

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実施期間中は全国4か所でタッチ&トライ展示も行われる。二子玉川の蔦屋家電内「蔦屋家電+」と福岡天神・渋谷の蔦屋書店内GREEN FUNDING タッチ&トライブースが3月20日から、梅田の蔦屋書店内プロモーション区画は3月20日から1ヶ月間の展示となる。

あわせて、wena誕生10周年を記念したクラウドファンディング限定モデル「wena X – 10th Special Edition -」も先行予約を開始する。スイス製機械式ムーブメントを搭載した機械式スケルトン腕時計で、フランスの老舗メゾンJean Rousseauが手がけるカーフレザーバンドを採用。Silver・Black各200本限定で、クラウドファンディング限定価格は税込34万9800円(31%OFF)となっている。

関連情報

wena X クラウドファンディングページ(GREEN FUNDING)

wena X 特設サイト

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FabScene編集長。大学卒業後、複数の業界でデジタルマーケティングに携わる。2013年当時に所属していた会社でwebメディア「fabcross」の設立に参画。サイト運営と並行して国内外のハードウェア・スタートアップやメイカースペース事業者、サプライチェーン関係者との取材を重ねるようになる。
2017年に独立、2021年にシンツウシン株式会社を設立。編集者・ライターとして複数のオンラインメディアに寄稿するほか、企業のPR・事業開発コンサルティングやスタートアップ支援事業に携わる。
2025年にFabSceneを設立。趣味は365日働ける身体作りと平日昼間の映画鑑賞。