20年ぶりに「電車を運転した」おじいちゃん——孫がPicoで作ったシミュレーション専用コントローラー

FabScene(ファブシーン)

3駅目に差しかかったとき、孫は何も言わなかった。それでもおじいちゃんは、乗車終了を知らせる汽笛が鳴った瞬間に自分でブレーキを緩め、スロットルをゆっくりと上げた。20年のブランクを感じさせない操作だった。

Reddit userのCrusaderNo287氏が、元列車運転士の祖父のためにRaspberry Pi Picoを核としたカスタムコントローラーを自作し、r/raspberry_piで公開した。祖父は医療上の理由で20年前に退職を余儀なくされ、現在は話すこともできなくなったが、鉄道関連の話題には目が輝くという。「せめてもう一度だけ運転させてあげられないか」と考えたのが制作の出発点だ。

シミュレーターにはオープンソースの「Open Rails」を選んだ。まずコードベースを調べ、夏の途中にスロットル制御のファームウェアを書き上げ、そこから電気機関車の操作に必要なコントロールを順次実装した。

コントローラーのレイアウトは祖父がかつて運転していたチェコスロバキア製電気機関車(Class 754系など、1970〜90年代製)の運転台を模している。FreeCADでシャーシと操作盤を設計する際、「操作に必要な最小限の操作子だけを残す(使う人を圧倒しないように)」と「祖父が一目で見覚えを感じるデザインにする」の2点を方針とした。

Raspberry Pi Picoのアナログ入力が3系統しかないという制約は設計に直接影響した。方向レバー(赤)・スロットルレバー(黒)・機関車ブレーキレバー(コーン型台座の頂部)の3つをアナログ(ロータリーポテンショメーター連動)とし、列車ブレーキはデジタルスイッチでシミュレートした。パンタグラフ1・2のON/OFFスイッチ、ヘッドライトスイッチ、TCS(保安装置)モードを兼ねるポーズボタン、3段階ビュー切替スイッチ(運転台・車外固定・線路横)なども搭載する。操作盤には装飾用に電圧計を2個配置しており、パンタグラフスイッチを入れると約3Vを表示して「架線に接続した感覚」を演出する仕掛けだ。Open RailsがHIDコントローラーとして読み取れるよう、改造モジュールも別途開発してリポジトリに含めている。

完成後、祖父と1時間プレイした。最初は操作の手順を説明しながら進めたが、3駅目で乗車終了を知らせる汽笛が鳴った瞬間、何も言わなくてもブレーキを緩めてスロットルをゆっくり上げた。「コントローラーを昔のチェコ機関車の運転台に似せた目的はまさにそこにあった。祖父はちゃんと認識してくれた」と本人はコメントに記している。コード・CADファイル・ドキュメントはGitHubで公開中だ。

関連情報

GitHub(CrusaderSVK287/Rpi-Pico-controller-for-OpenRails)

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