
太陽電池の変換効率には「シングルジャンクション(単接合)シリコン」という壁がある。理論上の上限は約29%で、現在の産業用TOPCon(トンネル酸化物パッシベーティングコンタクト)セルの実力は26%台に留まっている。その壁を超えるアプローチとして注目されているのが、異なる素材を積み重ねて幅広い光スペクトルを吸収するタンデム構造だ。
蘇州大学と中国のJinko Solarなどの共同研究チームは2026年3月、このタンデム構造で認定変換効率32.73%を達成したと学術誌Nature Energyに発表した。ペロブスカイトをトップセル、改良型TOPConをボトムセルに使ったモノリシック(一体型)タンデムセルで実現した数値だ。
従来のTOPConセルはフロント側(受光面)に「ホウ素拡散p+エミッタ」を採用していたが、ここでの再結合損失が効率向上の足かせになっていた。研究チームはこの部分をパターン化したn型TOPCon接点(フィンガー構造)に置き換え、リア側にはp型TOPCon全面エミッタを組み合わせた両面(バイフェイシャル)設計を採用した。
この構造変更により、再結合損失と光吸収損失を同時に抑制することに成功した。フルサイズのシングルジャンクション版でも認定効率26.34%を達成しており、高温多湿環境での耐久性試験と光劣化(LID・LETID)試験もクリアしている。タンデム版では開回路電圧1.961Vを記録した。
研究を率いたKun Gao氏は「フロントとリアの両方のパッシベーティングコンタクトを再設計したのが出発点だ」と述べ、既存の産業プロセスとの互換性を維持しながら設計を構築した点を強調した。
研究チームは今後、ペロブスカイト層の安定性向上と長期信頼性の確保に取り組む方針だ。

