
オランダ・ライデン大学物理学研究所(LION)のDaniela Kraft教授とMengshi Wei氏が、脳・センサー・ソフトウェアを一切持たずに泳ぎ、障害物を回避し、環境に適応する微小ロボットを開発した。動作の「知性」はプログラムではなく、形状と環境との物理的相互作用だけから生まれる。研究成果は2026年3月27日に学術誌「PNAS」に掲載された。
ロボットの大きさは数十マイクロメートル(ヒトの髪の毛は70〜100μm程度)。5μmの自己推進素子を0.5μmのジョイントで連結した、柔軟な鎖状構造で作られている。製造にはNanoscribe製の高精度3Dマイクロプリンターを使用した——現行技術の限界に近い造形精度が必要になる。電場をかけると鎖が自発的に動き始め、速度は毎秒7μmほどだ。

最も重要な発見は「形状と動きの双方向フィードバック」だ。形が動きに影響し、動きが形を変え、その形が次の動きを決める。この連鎖によってロボットは環境の変化を「感知」し、プログラムなしで反応する。障害物にぶつかると自動的に別のルートを探し、他のロボットと出会うと自然に方向を変える。密集した環境でも移動でき、邪魔な物体を押しのけることも確認されている。「ロボットが減速または停止させられると、まるで抜け出そうとしているかのように尾を振り始める。後方の素子はまだ動こうとしており、柔軟性があるため実際に動けるからだ」とWei氏は説明している。
従来のマイクロロボットは「小さくて硬いか、大きくて柔軟か」という二択だった。今回のアプローチはその両立を実現した最初の事例のひとつで、微小電子回路なしに「賢い」ふるまいを生み出せることを示している。
将来の応用として薬剤の標的投与や低侵襲医療処置・診断が挙げられているが、研究チームは現段階ではこのような動的・機能的ふるまいがどのように生まれるかの物理的理解を深めることを次のステップとしている。

