
充電と放電を繰り返すバッテリーには、電極の表面に針のような結晶が少しずつ育っていく問題がある。これは「デンドライト」と呼ばれ、成長が進むと電池内部で短絡を起こして突然死の原因になる。リチウムイオン電池でも課題だが、安価で安全な材料として次世代蓄電池の候補となっている亜鉛電池ではとりわけ深刻で、実用化の壁の一つになっている。
カナダ・コンコルディア大学のAyse Turak氏らの研究グループは、この問題を「金のナノ粒子を電極表面にまばらに並べる」という方法で大幅に改善した。論文はJournal of Materials Chemistry A誌に掲載されている(DOI: 10.1039/D5TA08137H)。
仕組みはシンプルだ。充電時に亜鉛イオンが電極に戻ってくるとき、どこに戻るか(核形成サイト)が均一でないと特定の場所に集中して針が育つ。金ナノ粒子はその「戻り先」として働き、電極全体に均一にイオンを誘導する道標のような役割を果たす。粒子同士の間隔が適切に保たれることで、特定の点だけに電流が集中するのを防ぎ、平坦な析出が続く。
重要なのはコーティングが面積の10%未満に留まる「まばらな配置」である点だ。電極の活性面を大きく覆わず、金の量も従来の厚塗りコーティングの100分の1程度で済む。研究者のTurak氏は「特別なラボ環境が不要で金の量も少ないため、コストが格段に下がる」と述べている。
実験では未処理の亜鉛電池と比べてデンドライトの発生が最大50分の1に抑えられ、対称セルによる試験では4000時間超、別の試験条件では6000時間超の動作を確認した。
カナダ・サスカチュワン大学のCanadian Light Sourceという超高輝度X線施設で電極表面を観測し、ナノ粒子の配置と役割を直接確認したことも今回の研究の特徴だ。研究グループはこの手法を銅電極や太陽電池、センサーへの応用も検討している。

