50年前のCPUをカード1枚で2.5倍速に、個人が1980年代製チップで自作したIntel 8086用拡張カード

FabScene(ファブシーン)

コンピュータサイエンティストのBrad氏(X: @cantworkitout)が、Intel 8086や8088を搭載したレトロPCの計算速度を向上させる拡張カードを自作し、2026年4月2日に公開した。1980年代に実際に製造されていたチップを使って製作されたこのカードは、整数の乗算処理を約2.5倍速くする。

Intel 8086/8088には、乗算処理が根本的に遅いという弱点がある。これらのCPUは乗算を、2進数の筆算と同じ要領でシフトと加算を繰り返すアルゴリズムで処理している。そのため、ほかの命令と比べて不釣り合いなほど多くのクロックサイクルを消費する。

Brad氏が自作カードの核心に据えたのは、TRWが製造した「MPY12HJ」チップだ。12ビット同士の掛け算を並列で一気に処理することに特化したこのチップは、クロック信号を持たない非同期動作で、回路を信号が伝搬できる速度の上限で演算する。CPUのソフトウェア的な乗算処理と比べて、桁違いに速い。

カードの動作はシンプルだ。CPUがバスに乗算命令を送り出した瞬間にカードが傍受し、連続する2つのバスサイクルの間に演算結果を返す。バス経由のやり取りによるわずかなオーバーヘッドを差し引いても、最終的な乗算速度はCPU内蔵の処理と比べて約2.5倍に向上した。

ただし重要な制約がある。既存のアプリケーションはこのカードの存在を知らないため、自動的には恩恵を受けない。Brad氏が自ら開発するプログラムであれば、CPU内蔵の乗算命令の代わりにカードを呼び出すよう記述できるが、ソースコードにアクセスできない既製のソフトウェアには効果がない。

Brad氏は「2026年に必要なものでは明らかにないが、作る価値は確実にあった」とコメントしている。使用したチップは当時すでに市場に存在しており、1981年にIBM PCが登場した時点のエンジニアにとっても、理論上は製作できた設計だ。

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