待ちわびたガジェットが届き、箱を開けて電源を入れた瞬間の興奮。手にしたマイコンボードに初めて電流が流れたときの感動。クラウドファンディングで支援したプロジェクトが製品化されたときの喜び。展示会で未来を変える技術に初めて触れたときの驚き。子どもがプログラミングで初めてLEDを光らせたときの笑顔。小さなスタートアップが発表した革新的なアイデアに心を奪われた瞬間――。あなたにも、きっとそんな体験があったはずです。
2025年6月2日から、私たちは新しいメディア「FabScene（ファブシーン）」をスタートします。
ものづくりの境界線が溶けていく
FabSceneが注目するのは、「パーソナルなものづくり」と「エンタープライズのものづくり」が交わる場所です。一見すると対極にあるようなこの2つの世界が、今まさに劇的な変化を迎えています。
10年前を振り返ってみてください。個人がプロ仕様の基板を海外に発注するなど、想像できたでしょうか。大企業のエンジニアが休憩時間に安価な3Dプリンターでプロトタイピングを楽しむ光景を、誰が予想できたでしょうか。
教育用として世界中に広まったRaspberry Piが、今では産業現場の最前線で活躍しています。GitHub上でオープンソースとして公開されているコードが、企業の新商品開発に活用されています。個人のMakerが作った小さなツールが、途上国の課題を解決することも珍しくありません。
企業の中でも変化は起きています。仕事の枠を超えて自由にプロトタイピングを楽しむ社内ものづくりサークルが生まれ、そうした活動を奨励する社内メイカースペースを設ける企業が増えています。そこで生まれた作品は、毎年日本各地で開催されるイベントで多くの人々を魅了し続けています。資本や人的なリソースの差はあれ、個人のプライベートなプロジェクトと企業内の開発の間には無数の共通項があり、個々に抱える熱量に変わりはありません。
変化の最前線を、あなたと一緒に
この急速に変化するものづくりの現場で何が起きているのか。どんな技術が生まれ、どんな人々が新しい価値を創造しているのか。FabSceneは、そうした最前線の情報を正確かつ丁寧にお伝えすることを使命としています。
しかし、私たちが目指すのは一方的な情報発信ではありません。
皆さんが日々取り組んでいる素晴らしいプロジェクトや作品こそが、このコミュニティの真の財産だと考えています。そこで、読者の皆さんが自分の作品やプロジェクトを投稿できる「読者投稿フォーム」を設置しました。
Raspberry Piを活用したDIY作品、自作ロボット、基板設計の工夫、センサーを使った面白い実験――ジャンルは一切問いません。編集部でチェックし、掲載に値すると判断した内容は記事として紹介します。
あなたの創意工夫や試行錯誤の過程、そして完成した作品への想いを、ぜひ私たちと一緒に共有してください。それは必ず、同じようにものづくりに情熱を注ぐ誰かの心を動かし、新たなインスピレーションの源となるはずです。
テクノロジーへの情熱を、未来へつなぐ
半導体の微細化から宇宙開発まで、IoTから生成AIまで、私たちを取り巻くテクノロジーは日々進歩しています。しかし、どれほど技術が高度になっても、その根底にあるのは「何かを作りたい」「課題を解決したい」という人間の純粋な想いです。
FabSceneは、テクノロジーに夢中になっているあらゆる人にとって最良のパートナーでありたいと考えています。初心者の方には分かりやすい解説を、経験豊富な方には深い洞察を、そして企業の方には新しいビジネスのヒントをお届けします。
原則として平日は毎日更新し、常に新鮮な情報をお提供します。技術の進歩は止まることを知りません。私たちも、その歩みに合わせて走り続けます。
ものづくりの世界は、今日もまた新しい扉を開こうとしています。その向こうにある未来を、一緒に覗いてみませんか。
FabSceneの旅が、今日から始まります。どうぞよろしくお願いします。
編集長 越智岳人
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