開けた本数を自動カウントする栓抜き、電子部品なしの機械式機構で実現

FabScene(ファブシーン)

パーティーで何本ビールを開けたか正確に把握するのは難しい。記憶は曖昧になるし、空き瓶を数えるのも面倒だ。そんな課題に対して、MakerWorldのユーザーExtRuben氏が提案したのが、開けるたびに自動的にカウントする栓抜きだ。

このアプローチのユニークな点は、電子部品を一切使わないことにある。ArduinoもRaspberry Piも、モーターやバッテリーすらも不要だ。代わりに採用されたのは、純粋な機械式のカウンター機構である。ボトルの栓を開ける動作が、内部の歯車とラチェット機構を通じてカウンターの数字を1つ進める。

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画像出典元:YouTube

機構の核心部分には、ボールプランジャーとスプリングを組み合わせた一方向クラッチがある。栓を開くために押し下げると、この機構が歯車を1段階回転させ、カウンターの数字を更新する。逆方向への回転は防がれるため、カウントが戻ることはない。

製作には3Dプリント部品のほか、いくつかの標準部品が必要だ。0.5×5×25mmのヘリカル圧縮スプリング、3×4mmで5Nのボールプランジャー、各種M3ネジ(6mm、14mm、25mm)、0.5×5×10mmの引張ばねを使う。これらは一般的なハードウェアストアやオンラインで入手できる。

ただし、この設計には課題もある。コメント欄では、スプリングの強度が不足するという報告が複数寄せられている。標準のスプリング1本では、カウンターの歯車を確実に次の位置まで送り込むのに力不足で、手動で引き出す必要が生じる。製作者のExtRuben氏は、2本のスプリングを並列に配置する解決策を提案しており、実際にこれで問題が解消したとの報告もある。別の選択肢として、ボールペンのスプリングを試すことも提案されている。

もう一つの課題は組み立ての難しさだ。特に、カウンター用の歯車ホイールを中央のピンに取り付ける工程で、ピンが破損したというコメントもある。サブミリメートル単位の公差が要求される部分もあり、3Dプリンターの精度や材料によっては調整が必要になるだろう。ExtRuben氏は、穴径を若干大きくしたミニギアファイルを追加で公開するなど、ユーザーからのフィードバックに対応している。

製作者は、カウンター機構に興味がないユーザー向けに、シンプル版も用意している。この版では、ボールプランジャーと圧縮スプリングを省略でき、より簡単に組み立てられる。純粋に栓を開ける機能だけが欲しい場合には、こちらが向いている。

組み立てガイドはPDF形式で提供されており、LaTeXで組版されている点も特徴的だ。あるユーザーは、このドキュメントを見て「即座に気に入った」とコメントしている。技術文書としての完成度の高さも、このプロジェクトの魅力の一つだろう。

この作品は、電子工作に頼らずとも面白い機構が作れることを示す好例だ。3Dプリント技術により、かつては専門的な工作機械が必要だった機械式カウンターのような複雑な機構を、個人でも製作できるようになった。パーティーの話のネタとして、あるいは機械設計の学習教材として、参考になる設計だろう。

関連情報

Bottleopener (Push to Open) integrated counter(MakerWorld)

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