
3Dプリンターで製作した樹脂パーツを鋳型として銀を鋳造し、メカトロニクス機構を組み込んだウェアラブル作品が製作された。製作者のAllie Katz氏とDJ Harrigan氏(別名Mr. Volt)は、Formlabsが主催した10周年記念デザインハッカソンで、スターリングシルバー製のリーフビートル(ハムシ)をモチーフにしたネックレスを製作した。
製作者らは、ガウディが設計したサグラダ・ファミリア大聖堂のステンドグラスと、Festoが開発するバイオメカニカルロボットから着想を得て、装着可能な作品として設計した。モチーフとして選ばれたのはコガネムシだ。
銀製パーツの製作にはインベストメント鋳造(investment casting、精密鋳造法)が用いられた。Formlabsの鋳造用レジン(wax resin)で3Dプリントしたパーツを樹状構造に取り付け、インベストメントプラスター(investment plaster、石膏系鋳型材)で鋳型を製作する。鋳型を加熱して樹脂を溶かし出した後、溶融した銀を流し込む。冷却後、研磨工程を経て鏡面仕上げとした。この工程により、機械加工では困難な複雑な形状を金属で再現できる。

甲虫には3つのサーボモーターが内蔵され、外殻(elytra、上翅)の開閉と触角の動きを制御する。制御にはArduino Nano 33 BLEが使用され、胸部に搭載された熱感知カメラで人の接近を検知する。人が近づくと、甲虫は外殻を開いて腹部のLEDを露出し、触角を動かす反応を示す。
外殻の開閉機構は、当初の4節リンク機構から平歯車を用いたシンプルな設計に変更された。触角の駆動には、胸部内で斜めに配置された単一のサーボモーターから、かさ歯車を介して左右の触角を逆方向に回転させる機構が採用された。

製作過程では、手作業で仕上げた銀製パーツと、サブミリメートルの精度が要求される機械部品との組み合わせが課題となった。微細な誤差により機構が正常に動作しないケースが頻発し、製作者らは材料を慎重に研削して調整を繰り返した。
ハッカソンは3日間で開催されたが、この複雑さのプロジェクトを完成させるには不十分だった。製作者らはイベント後も作業を継続し、準備とハッカソン期間を合わせた時間よりも長い時間をかけて完成させたという。
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I Made a 3D Printed Necklace with an Impressive Secret Ability(YouTube)

