
古いCRTディスプレイに現れる「白濁」——正面ガラスパネルの縁から広がるこの現象に悩んだことはないだろうか。ビンテージMac愛好家のYouTuberが、UV硬化樹脂をシリンジで注入するという方法でSony Trinitron GDM20 EO1の白濁を修復し、その過程を動画で公開した。
CRTの白濁(いわゆる「白内障」)は、チューブ表面に接着されたガラス製アンチグレアパネルとCRT本体の間に充填された樹脂が乾燥・収縮し、空気が入り込むことで発生する。1970〜80年代のディスプレイでは以前から知られていた症状だが、当時は「新しい」とされていたSony Trinitronのような90年代のモデルにも近年同様の症状が広がりつつあるという。
修復のアプローチは単純だ。市販のUV硬化樹脂(シリンジ付きの5mlディスペンサー)と注射針を使い、アンチグレアガラスの縁から針を刺して気泡部分に樹脂を注入する。樹脂は意外なほど柔らかく、針がスムーズに入る。注入後、気泡内の空気を押し出しながら新しい樹脂を充填し、最後にUVランプで5分間硬化させる。
修復を通じて明らかになったコツと注意点がある。針が古い樹脂で詰まりやすいため、リワークステーションやヒートガンで針を加熱して樹脂を溶かしながら作業を進める必要がある。使用した5mlの樹脂でおよそ1×5cmのエリアを修復できたとしており、制作者は「1ml per 1cm²」を目安として示している。ごく小さな気泡は拡大しないと見えないレベルに収まっており、視覚的な仕上がりは「修復した箇所がわからない」レベルだ。
なお、同じディスプレイには気泡とは別に、ベゼルのプラスチックから溶け出した可塑剤がガラス外面に付着しているケースもあり、こちらはWindex・IPA・重曹・酢などでは除去できなかったという。この問題の解決策は引き続き模索中だ。
根本的な修復方法はガラスパネルを150℃に加熱して剥がすことだが、失敗リスクが高い。今回のUV樹脂注入は「加熱剥離よりずっと低リスクで、しかも機能する」代替手段として位置づけられる。硬化後の樹脂も同様に150℃で加熱すれば除去できるため、可逆性がある点も安心材料だ。
動画ではこのディスプレイを使っている1990年代の変わり種Mac「Power Macintosh 6100」のDOS互換カード(DX2/66)の導入作業も紹介されており、コミュニティ設計のPCBアダプターを使って純正の高価な専用ケーブルを代替する手順も見どころだ。

